サステナビリティ

社会的課題への取組みの歴史

当社グループの源流である東京火災は1888年、「火災から人々を守る」という使命感から日本初の火災保険会社として誕生しました。現在は、人口減少や少子高齢化、気候変動、そしてテクノロジーの進化など、社会・経済の構造が大きく変化するなかで、持続可能な社会の実現に向け、さまざまな社会的課題の解決に取り組んでいます。

当社グループは1992年に国内金融機関で初めて「地球環境室」を設置し、早くから地球環境問題への対応を行ってきました。1998年に「環境レポート」の発行を開始し、1999年にはSOMPOアセットマネジメントがエコファンドである『損保ジャパン・グリーン・オープン(愛称:ぶなの森)』の運用を開始しました。また2001年には国内金融機関で初めて「環境・社会レポート2001~サステナビリティレポート~」を発行するなど、情報開示にも積極的に取り組んできました。
2010年4月のNKSJホールディングス(現SOMPOホールディングス)の発足と同時に「グループCSRビジョン」を策定し、2011~2012年にかけてグループCSR重点課題を特定、2013~2014年にはグループCSR-KPIを策定することで、グループ全体の取組みの実効性を高めてきました。
2016年には「安心・安全・健康のテーマパーク」の実現を目指す中期経営計画がスタートし、SDGsやパリ協定など国際社会の動向をふまえてグループCSR重点課題を見直しました。2018年には「2017年度比で2030年度までに21%削減、2050年度までに51%削減」とする新たな温室効果ガス排出量の中長期削減目標を設定し、気候変動の緩和に取り組んでいます。

グループCSR重点課題

当社グループが注力していく社会的課題を特定するとともに、グループの強みとして3つの重点アプローチを定め、持続可能な社会の実現に向けて継続的に取り組んでいます。

強みと特長

ステークホルダー・エンゲージメント

当社グループは、ステークホルダーとのコミュニケーションが、社会的課題に対する理解を深め、信頼関係と協働関係を構築し、より大きな成果を生み出すための重要な取組みであると考え、「ステークホルダー・エンゲージメント」を重視してきました。
ステークホルダー・エンゲージメントに取り組む目的は主に2つあります。

  1. ステークホルダーのご意見をグループの意思決定に活かして業務の革新や品質向上などにつなげること
  2. ステークホルダーと価値観を共有し、よりよい社会を目指して行動するグループであるために、ステークホルダーに積極的に働きかけ、相互理解と協働を深めること

当社グループは、グループCSR重点課題やグループCSR-KPIを通じて、社会的課題の解決に資する商品・サービスの開発・促進などにつなげるとともに、継続的なエンゲージメントにより、これらの取組みの向上・改善を図っています。
昨今の新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって顕在化・深刻化した社会的課題に対しては、地域で活動するNPOや医療機関に対する支援などを通じて解決に取り組んでいます。

 

イニシアティブへの積極的な参画

当社グループは、国内外のイニシアティブへの参画を通じて、先進的に取り組む企業や国際機関などとの対話の機会を持ち、知見や先進事例などを学び、自社の取組みの向上につなげるサイクルを意識して取り組んできました。
多様な主体が協働して諸課題に取り組むことがより大きなインパクトをもたらすとの認識のもと、イニシアティブの設立から関与するなど積極的に参画しています。また、情報開示などを通じて、参画を通じて得られた経験を発信することで、持続可能な社会の実現への貢献を目指しています。

主なイニシアティブと参画時期

サステナビリティ推進体制の強化

当社グループは、CSRの幅広い取組みを推進する仕組みとして、ISO14001をベースとした「CSRマネジメントシステム」を構築し、推進の基盤としています。グループ会社において年間を通じたCSR実施計画を策定し、改善に向けたPDCAを実践しています。
さまざまな社会的課題が複雑に絡み合い、深刻化するなか、取組みをより一層加速させるために、2020年4月から、従来の「グループCSR推進本部会議」をグループCOOを議長とする「サステナビリティ・CSR協議会」に変更しました。同時に、「CSR推進」および「ESG/サステナビリティ」の2つのワーキンググループを新たに設置し、当社グループの事業部門も含めたステークホルダーとの意見交換や保険 引受・投融資などの実務の視点をふまえた協議を行うなど、実効性を高める体制を構築しました。

気候変動への取組み

当社グループは「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」に賛同し、気候変動に対するさまざまな取組みと透明性の高い情報開示に取り組んでいます。

1.気候変動への対応体制

当社グループは、取締役会が定める「グループERM(戦略的リスク経営)基本方針」に基づいたリスクマネジメント体制を構築しています。当社グループに重大な影響を及ぼす可能性があるリスクを「重大リスク」と定義し、事業の抱えるリスクをグループCRO(Chief Risk Officer)が網羅的に把握・評価したうえで、その管理状況を定期的に経営執行協議会(MAC)および取締役会などの会議体に報告する体制としています。
想定を超える風水災損害の発生および脱炭素社会への移行に伴うレピュテーション毀損や資産価格への影響などの気候変動リスクについても重大リスクとして認識し、役員が責任者となって対策を実施しています。

2.気候変動リスクおよび機会への対応

(1)自然災害激甚化などに伴うリスクへの対応

当社グループの損害保険事業は、気候変動に伴う自然災害の激甚化などの影響を受けるリスクを内在していることから、気候シナリオを活用した分析などに取り組んでいます。
風水災リスクに関しては、従来からストレステストを実施し、経営に重大な影響を及ぼすストレスシナリオが顕在化した際の影響を定量的に評価し、資本の十分性やリスク軽減策の有効性を検証しています。また、2018年より、「アンサンブル気候予測データベース:d4PDF*(database for Policy Decision making for Future climate change)」を活用し、気象・気候ビッグデータを用いた台風・豪雨に関する大規模分析を行い、気温が2℃または4℃上昇した気候下における災害の平均的な傾向変化や極端災害の発生傾向を定量的に把握する取組みを進め、中長期にわたる自然災害の影響の定量分析・把握に努めています。

*文部科学省の気候変動リスク情報創生プログラムにて開発されたアンサンブル気候予測データベースです。多数の実験例(アンサンブル)を活用することで、台風や集中豪雨などの極端現象の将来変化を、確率的に、かつ高精度に評価することが可能です。また気候変化による自然災害がもたらす未来社会への影響についても確度の高い結論を導くことができるという特徴があります。

(2)脱炭素社会への移行に伴うリスク・機会への対応

脱炭素社会への移行に向けた法規制の強化やテクノロジーの進展は産業構造および地域社会に変化をもたらし、保険ニーズの変化、株式などの運用資産の価値毀損など、当社グループの将来の業績や財政状態などに影響を及ぼす可能性があります。一方で、産業構造の変革は、新たな保険ニーズやマーケットの創出などのビジネス機会の拡大をもたらすととらえ、脱炭素社会への移行を見据えてさまざまなビジネスに取り組んでいます。
上述のリスク・機会に適切に対応するために、当社グループはグループCOOを議長、グループ各社の役員をメンバーとした「サステナビリティ・CSR協議会」において状況把握、協議を行い、必要に応じて経営執行協議会(MAC)に報告する体制を構築しています。また社内外のステークホルダーとの対話を、社会・経済の変化をとらえ、当社グループへの期待を把握し、グループの事業を発展させる重要な機会と位置づけ、継続的に実施しています。

3. 気候変動の影響を想定した取組み

当社グループはIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:国連気候変動に関する政府間パネル)の「共通社会経済経路(SSP:Shared Socioeconomic Pathways)」シナリオなどを参考に、気候変動が激化した社会や低炭素社会を想定したさまざまな取組みを行っています。


(1)気候変動が激化した社会を想定した取組み

地震による被害予測画像(地図版と衛星版)

旧来型の化石燃料に依存し、気候変動への対策が十分になされず、経済発展が鈍化した「地域分断社会シナリオ(SSP3)」においては、気候変動が進行し自然災害が激甚化するとともに、十分なインフラ投資が行き届かず、自然災害に対する脆弱性が高まるとされています。
このような社会を想定し、当社グループでは、気象・気候ビッグデータを用いた損害保険事業への影響把握や、保険料率・再保険カバーの最適化に加え、以下の取組みを通じて、中長期的な事業のレジリエンス強化を図っています。

  • ニューリスク対応商品の販売強化、デジタル技術活用による新たな顧客サービスの創出などの国内損害保険事業の収益性強化
  • 事業領域拡大(収益源の多様化)
  • 地理的分散(海外M&A)

<日本国内での主な取組み>
損保ジャパンでは、地域防災に関わる気象や建物などの各種データとAI(人工知能)技術を活用して洪水・地震などの自然災害の予測に取り組むとともに、自治体向けには、避難にかかる諸費用を補償する「防災・減災費用保険」の提供によって自治体による迅速な初動対応をサポートし、住民の安心・安全な生活への貢献および地域レジリエンスの向上を目指しています。
気候変動適応ニーズの高まりに対しては、損害保険だけでなく、リスクコンサルティングサービスの機会拡大が見込まれます。SOMPOリスクマネジメントは、2018年から文部科学省の「気候変動適応技術社会実装プログラム(SICAT)」に参画し、気温が2℃または4℃上昇した際の気候予測データベースの活用や、研究機関との意見交換などを行いました。このような取組みを通じて、自然災害評価モデルの高度化や気候関連情報開示などに関するノウハウの蓄積とビジネス拡大を目指しています。

<海外での主な取組み>
海外保険事業では、中核事業会社であるSOMPOインターナショナルが従前より強みとする農業保険分野にて統合ブランド「AgriSompo」を立ち上げ、欧米に加えて南米、アジアへも展開地域の拡大を進めています。また、損保ジャパン、SOMPOリスクマネジメントが国際協力銀行(JBIC)などとともに研究・開発を重ね、2010年より東南アジアで提供を開始した「天候インデックス保険」は、国連開発計画(UNDP)が商業活動と持続可能な開発を両立するビジネスモデルの構築を促進することを目指して主導するイニシアティブ「ビジネス行動要請(BCtA)」の認定を2015年に受けています。いずれも風水災や干ばつなどの自然災害リスクに対する補償の提供で、農業従事者の経営リスク軽減に貢献しています。当該保険商品を含む気候変動の適応ニーズは、気候変動に脆弱な発展途上国を中心に今後ますます高まると認識しています。


(2)低炭素社会を想定した取組み

一定の経済発展のもと、気候変動への対策が効果的に講じられ、環境と経済が調和する「持続可能な社会シナリオ(SSP1)」においては、地域資源を活かした循環型社会、省エネルギー社会、脱物質型のシェアリングサービスの発展などが想定されています。
このような社会においては、太陽光、風力などの再生可能エネルギーの主流化が進むと同時に、地域社会におけるシームレスな公共交通網の整備などの「移動革命」が自動車台数減少をもたらすなど、主に国内損害保険事業に影響を与える可能性があります。

<再生可能エネルギーの普及に向けた貢献>
当社グループは、エネルギー転換が脱炭素社会に向けて重要な役割を担うとの認識のもと、再生可能エネルギーの普及を後押しする取組みを進めています。

写真提供:株式会社ウィンド・パワー・グループ

  • 風力発電事業者向けリスクコンサルティングサービス
    損害保険商品の提供に加え、大学や研究機関などのステークホルダーとの共同研究により得られたノウハウを活用し、風力発電事業のプロジェクト組成から運転開始、その後の撤去またはリプレイスに至る すべてのプロジェクトフェーズを対象として、風力発電事業に関わるバリューチェーン全体へのリスクマネジメントサービスを展開しています。

<CASEへの取組み>
CASEに代表される従来の自動車保険マーケットに大きな変化をもたらす動きに対しては、新たなマーケットの構築に向けて、当社グループが持つデータを活用し他業界や研究教育機関との協働に取り組んでいます。

コネクテッドサポートセンター
/遠隔でアナウンスするオペレーターの様子

  • 自動走行への取組み
    交通渋滞緩和・走行時の燃費向上・物流コスト低減などによるエネルギー効率の改善や、シームレスな公共交通の実現に向けた動きが加速すると想定しており、損害保険事業を通じて得られる走行・環境負荷・交通事故などのリアルデータとデジタル技術を融合させ、安全な自動運転サービス実証に必要な「事故の予防・監視・補償」を提供する自動運転実証プラットフォームの構築を目指しています。
    現在、自動運転の事故トラブル対応サービス研究拠点「コネクテッドサポートセンター」を開設し、自動運転サービス実証を支えるインシュアテックソリューション「Level Ⅳ Discovery」の共同研究*に取り組んでおり、高い安全性を低コストで提供する自動運転実証プラットフォームにより、安心・安全な自動運転社会の早期実現を目指します。

    *自動運転システム開発の株式会社ティアフォーと高精度三次元地図技術を持つアイサンテクノロジー株式会社との業務提携にもとづく共同開発
  • シェアリング&サービスへの取組み
    MaaS(Mobility as a Service)の発展は、シームレスな地域交通システムに向け「ラストワンマイル」の空白を埋める重要な役割を担うと見込んでいます。当社グループは、個人間カーシェアリング、マイカーリース、駐車場シェアリングに参入し普及へ取り組むとともに、「MaaS」の実証実験に関するリスクマネジメントサービスや、市町村やNPOなどの移動支援サービスの運営主体向けの保険提供を行っています。自動車保険データや代理店販売網を活かした事業の拡大を通じて、「移動革命」への貢献および新たなビジネス機会の創出に取り組んでいきます。
    また、「ラストワンマイル」の解決に向けて注目されている電動キックボードについて、普及に向けて専用保険の開発や安全確保のためのリスクアセスメントに取り組んでいます。

(3)その他の取組み



<機関投資家としての取組み>
当社グループは、投資先企業との対話を通じて企業の気候変動への対応を促すなど、責任ある投資家としての取組みを推進しています。
損保ジャパンでは、投資先企業とのESGエンゲージメントに加え、気候変動などのトレンドが運用ポートフォリオに与える影響の定量的な検証を進めています。
SOMPOアセットマネジメントは、機関投資家が協働でエンゲージメント活動を行う「Climate Action100+」に参加し、投資先企業の温室効果ガス排出量の削減や長期計画の策定などへの働きかけを積極的に行っています。
また、2017年9月に責任投資原則(PRI:Principles for Responsible Investment)が主導する「モントリオール・カーボン・プレッジ」への賛同を表明し、長期投資を志向する「SNAMサステナブル投資マザーファンド」の受益権1万口あたりの温室効果ガス排出量およびファンド全体の排出量の算出、公表を継続的に行っています。

<市民社会と連携した環境人材育成への取組み>
当社グループは、1992年に旧安田火災が「地球環境室」を設置して以降、気候変動を含む環境問題には、一人ひとりが意識と関心を高め、自発的に行動することが重要であるとの認識のもと、市民社会と連携した環境人材の育成に継続的に取り組んでいます。また、研究機関や行政機関との協働による環境問題に関する研究の成果を社会へ広く発信しています。

4. 指標と目標

当社グループはCSR・ESGの取組みの促進やその効果を確認するための指標である「グループCSR-KPI」に以下の項目を掲げ、継続的に取り組んでいます。

  • 気候変動への適応・緩和に向けた商品・サービスの開発・提供
  • 環境保全に関する普及活動・教育機会への参加人数
  • CO2排出量
  • 電力使用量
  • 紙の使用量

2018年度に「2017年度比で2030年度までに21%削減、2050年度までに51%削減」という温室効果ガス排出量の中長期削減目標を新たに設定し、気候変動の緩和に取り組んでいます。
また、パリ協定の掲げる長期目標の実現に必要な温室効果ガス排出量削減を目指すイニシアティブであるSBT(Science Based Targets)の認定を目指して取組みを進めており、日本の金融機関では唯一、SBTの金融機関向けガイドライン策定におけるエキスパート・アドバイザリー・グループに参画し、枠組み作りに関与しています。

  • スコープ1(ガソリンなどの使用による直接排出)、スコープ2(電力などのエネルギー起源の間接排出)、 スコープ3(輸送や出張など、バリューチェーン全体における間接排出)の合計値であり、算定対象範囲は以下のとおりです。
  • 2014年度:損保ジャパン(連結子会社を含む)および日本興亜損保(連結子会社を含む)
  • 2015年度:当社の主要な連結子会社および事業会社
  • 2016-2019年度:当社および主要な連結子会社(SOMPOケアは2017年度より算定対象)
  • 2012年度から認証機関による第三者検証を受けています。
  • 2017年度と2018年度の排出量は、2019年度の算出基準で再計算しています。
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