富岡 昨年度はSOMPOホールディングスの約100名の部課長の皆さん、今年度は損保ジャパンの約200名の部店長の皆さん、SOMPOひまわり生命の約270名のマネジメントを担う方々とミッション・ドリブン1on1のプロジェクトでご一緒させて頂く中で、パーパス経営や「ミッション・ドリブン」な働き方に対して全力で取り組む土壌・カルチャーがあることを強く感じました。これはSOMPOグループの大きな強みですし、決して一朝一夕に出来上がったものではないでしょう。日々、現場でお客様と接する社員や経営陣の皆さんが長年培ってきた「お客さまのために、社会のために、人のために自分たちは存在しているんだ」と考える組織文化からくるものだと思います。SOMPOグループは「自分たちが暮らす街や人々を火事から守る」という創業者たちの「ミッション・ドリブン」な想いに共感する人々が集まり、設立された会社であり、その想いは今も脈々と受け継がれていて、一人ひとりの社員にも「ミッション・ドリブン」となるDNAが存在しているのではないでしょうか。それをさらに進化させるきっかけとして、今回のプロジェクトがうまく合致したのではないかと考えます。マクロな観点では経営のパーパスが語られていても、実際のビジネスの現場を「駆動する」仕組みとして徹底している会社は少ないでしょう。「現場で駆動させていく」というのは、日々の仕事の中で、上司と部下のミッション・ドリブンな対話が丁寧になされているか、ということです。
例えばSOMPOグループの皆さんに「MYパーパス」についてのお話をお聞きする中では、ご自身やご家族の「健康が危ぶまれた」という経験を通じて、目の前の仕事における「MYパーパス」に目覚めていったお話を伺うことがあります。これまでは時代背景のせいもあり、そのような私的な体験や内に秘めた想いを、日々の仕事の中で語る機会はありませんでした。けれども、人は様々な経験や体験を経て成長しますし、それらが人を「使命に目覚めさせていく」ものです。上司と部下が日々の1on1における丁寧な対話を通して、それまで抑え込まれていた「ミッション・ドリブンに働きたい」という気持ちに気づき、解放され、社員一人ひとりが、自分の想いに突き動かされていく。そんな企業カルチャーをグループ全体で作り上げていくという、壮大なチャレンジにSOMPOグループの皆さんは今、取り組んでいらっしゃるのだと思います。
加藤 「原体験を潜在的に持っている社員が多い」というのは、この研修を実施してきた中で私自身も強く感じているところです。日々忙しい中でこのプログラムを行うことがどれほど業績向上につながるのか、半信半疑でスタートした社員も多かったと思います。しかし、プログラムが進む中で、これまでの原体験を言語化することで一人ひとりの思いが解き放たれ、共感を得て、盛り上がってきたのではないかと考えます。企業文化変革は「人ドリブン」なので、自分たちが何のために変わらないといけないのか、それが「お客さまのため、社会のため」という納得感と共感につながったことがポイントだったのだと思います。
平野 社内でミッション・ドリブン1on1のワークショップを何度か実施し、参加者に原体験を語ってもらい、MYパーパス作成してもらいました。参加者のお話を伺い、一人ひとりにとても熱いストーリーがあり感動するとともに、ミッション・ドリブン1on1の可能性を改めて感じました。整理された奇麗なMYパーパスステートメントを作ることが目的ではなく、自分の中にある想いを言語化して自分自身が気付くこと、それが仕事にもつながっていく、それを自身のストーリーとして語れるようになるということが、とても価値のあることであり、企業文化変革につながる取組みなのだと考えています。
富岡 部店長の皆さんに限らず、社員の皆さん一人ひとりがそのような原体験や想いを語ることが出来るのは素晴らしいことですね。これまで私たちは「利益」という単一の価値観で動かされてきました。業績・数字ばかりが重視され、上司は目の前にいる部下が実現したいと思っていることや、内に秘めた熱い想いを知らない、知る機会がなかったのだと思います。今、確かに言えるのは「人の想いを中心としたマネジメントや対話」が上司・部下の間で行われなければ、経済価値と社会価値の両立はできないということです。
平野 この取組みを進めていって、当社だけでなく日本全体にこの動きを広めていくには、社員のやる気やマインドの向上が、いかに将来の業績や企業価値につながっていくかを実証していくことも重要なポイントだと考えています。未財務の価値をいかに示し、経済価値やブランドそして企業価値につなげていくのかにチャレンジしているのが、現在の当社の状況です。
加藤 当社グループの歴史のなかで、これだけグループ横断で盛り上がったプログラムはあまりなかったと思います。実際に未財務の価値をどれだけ企業価値に結び付けられるのか、最後までしっかり取り組みたいと思っています。
富岡 私たち一人ひとりがMYパーパスに気づき、それに向き合うことは、ゴールではなくスタート地点です。誤解を恐れずに言うと、「他者からの評価」に晒されてきた私たちは、これまで「自分の人生のスタート地点」に立つことが出来ていなかったのかもしれません。これまでは社会構造的に、自分自身のパーパスや価値観を問われることはなく、多くの人が今まさに「自分は何者か・自分のパーパスは何か」という問いに向き合うというスタート地点に立ち始めている。これからが「本番」と言えるのではないでしょうか。ミッション・ドリブンな人が増え、集まった時、その次のステップが、何をビジョンとして設定するのか、未来に向けて語り合っていく「ビジョン・ドリブン」な状態です。「将来的にこれを実現したい」というビジョンが、未来の私たちの社会を創っていくのだと思います。
SOMPOグループの皆さんのお仕事が、「MYパーパス」から始まり、「MYビジョン」に至り、現在の仕事における「MYチャレンジ」へと繋がっていった時に、経済価値と社会価値が両立する経営が実現するのではないでしょうか。
現在のような「答えの無い時代」では、「変革を実現したロールモデル」があることは大変重要で、それは社会全体の新たなマインドセットにもつながり、「私たちが描いたビジョンは必ず実現するのだ」という希望にもなり得ます。今回のSOMPOグループの取り組みは、いずれ日本全体の変化へと繋がっていくはずだと確信しています。
加藤 ミッション・ドリブン1on1は、実際他社の人事部からの問い合わせも非常に増えています。私たちの取組みが社外からも共感を得られているという実感を持っていて、日本社会全体が求めているものが組み込まれているのかなと感じています。
富岡 SOMPOグループの皆さんとお話していると、MYパーパスを社員同士で語り合う取り組みが自然と生まれていったりと、こうした活動に大変前向きでいらしゃると感じます。今回の取り組みがSOMPOグループのDNAやカルチャーに合致したのには、前々からどのような土壌があったからだとお考えですか。
平野 さまざまな会社が1つになってできた会社なので、さまざまなカルチャーが混じり合ってできた会社、というのは言えますね。また昔からチャレンジ精神がある、という側面はよく言われてきました。ただ「当社グループだからこの取組みがよく当てはまった」ということではなく、どのような企業でも本気で取り組めば、実現できるのではないかと感じています。
富岡 「三方良し」や「志」といった概念や、「誰かのために頑張る」という日本社会に根付くDNAが元々あり、それは、高度経済成長期、社会構造的に抑え込まれてしまった時期もありますが、元々のマインドセットは日本人のベースにあると思います。加えて損害保険事業に携わる業界ならではのマインド、さらにSOMPOグループならではのDNAがあるのだろうなということは外部からご支援している者として感じています。
平野 損害保険の会社に入社したということは、さまざまな動機があると思いますが共通する意識としては「社会的な意義が大きい」という動機はあると思います。ベースに、このような意識がある人たちが集まっているという点は確かにあると思います。「三方良し」の考え方は日本の風土・強みに合致していると思いますが、これまでは「自分のために」という考え方を全面に出すのは良くないと、いうパラダイムだったのかもしれません。しかし、これからは「自分のパーパス・ミッションと会社のパーパス・ミッションをつないで融合していく」というマインドが重要だと思います。
加藤 私たちは、若年層が新しいマインドを持っていると感じていて、企業が変わらないと若年層の離職にもつながってしまうことを懸念しています。ここで変わらないと、日本企業が生き残れないのではないかというラストチャンスの局面を迎えているように思います。
平野 新しい企業が新しい文化を作っていくというスタートアップ企業などでは、比較的マインドセットしやすいと思います。ただ古くて伝統のある企業を変える手法は世の中にあまり無いように感じています。これを実現して、社会に大きなインパクトを与えられればと考えています。
富岡 SOMPOグループの場合、経営チームそのものがミッション・ドリブンになっており、ワンチームで経営を動かしている、という強みがあります。加えて、今まさに始まろうとしている、日々の現場でのミッション・ドリブンな対話を組織内に根付かせること、この地道な積み重ねが、やがて大きな変化へとつながっていくと信じています。これからも SOMPOグループのパーパス実現のため、ぜひ共に取り組ませていただければと思います。本日はありがとうございました。