人権尊重の取組みの全体像

当社グループは人権尊重責任を果たすために、1.人権方針の策定・公表、2.人権デュー・ディリジェンス(以下「人権DD」という。)の実施、3.救済の仕組みの構築に向けて取り組んでいます。
また、ステークホルダーとの対話を継続的に行い、当社グループの状況などをふまえながら、改善を進めていきます。
経産省『責任あるサプライチェーン等における人権尊重のための実務参照資料』を参考に作成
1.人権方針の策定・公表
当社グループは、「グループ人間尊重ポリシー」において、グループおよびバリューチェーンを含めたグローバル市場で、すべてのステークホルダーの基本的人権を尊重すること、国際的な行動規範を尊重しつつ、持続可能な社会の創造に向けて、高い倫理観をもって行動していくことを宣言しています。
本方針は、グループ全社員へ適用するとともに、取引先、協業先、委託先などのパートナー企業においても、適用するように働きかけを行います。
また、あらゆる形態の強制労働、人身取引、児童労働、差別やハラスメントなどの人間の尊厳を損なういかなる行為も許容しません。適用される法規制を遵守しつつ、結社の自由および団体交渉権に関する基本的な権利を尊重します。
当社グループでは、「グループCSR調達ポリシー」に基づいた調達を行うことで、取引先、協業先における人権への配慮を行うとともに腐敗防止に努め、すべてのサプライヤーに対して、公正・公平な取引を行います。
関連方針
推進体制
人権を含むESGに関する適切な対応を促進するために、当社ではグループ全体のサステナビリティの推進母体であるグループサステナブル経営推進協議会(以下「協議会」)を中心とする推進体制を構築しています。
協議会は、グループのサステナビリティ課題に関する意思決定を行う機関として、グループCSuOを議長、損保ジャパン、SOMPOインターナショナル、SOMPOひまわり生命、SOMPOケアの主要4事業のCSuO(サステナビリティ担当役員)およびCSOをメンバーとし、その傘下に配置されたサステナブル経営推進連絡会に決定事項の伝達・共有を行うことで、グループ全体で施策を実行する仕組みとしています。また、協議会での協議・報告事項は、グループ執行会議を経て取締役会に定期的に報告される体制を構築しています。
人権課題については協議会の事務局を務めるサステナブル経営推進部が中心となり、ステークホルダーからの意見をふまえて実効性のある社内体制を確立しています。優先課題や取組状況について継続的な改善を図り、これらの状況を開示することが重要であると考えています。
ステップ1 人権リスクの洗い出し・特定・評価(アセスメント)
当社グループは、ERM(戦略的リスク経営)の枠組みを活用し、すべての事業を対象に、発生する可能性のある「人権の尊重に関する潜在的な影響とリスク」を洗い出し、優先課題の特定、評価に取り組んでいます。
人権リスクの洗い出しにあたっては、UNEP FIの金融機関向けに策定した人権リスクに関するガイダンス(UNEP FI Human Rights Guidance Tool for the Financial Sector)や、国連グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンのCSR調達セルフ・アセスメント質問表など、さまざまな国際的ガイドラインを参照しています。
リスク評価結果-人権リスクマップ
グループ全体で実施されたリスクアセスメントに基づき、優先的に対応をする課題を特定するため「深刻度*1」と、「発生可能性*2」を評価軸として1年に1度、負の影響度を分析しています。
2024年度の人権リスク評価にあたっては、新たに健康および安全、ハラスメント、従業員などの個人情報漏洩やプライバシーの侵害、商品・サービスに関わる人権の尊重と差別の禁止などの人権リスクを確認し、多面的にリスクを整理するようにしています。
- 規模(影響の重大性)、範囲(影響の及ぶ範囲)、救済困難度(影響が生じる前と同等の状態に回復することの困難度)をもとに評価
- リスクが実際に起こる可能性(頻度)、「およそn年に1回の頻度で生じるか」をもとに評価
ステップ2 優先課題の特定および負の影響の防止・軽減措置
リスクアセスメントの結果をふまえ、2024年度は、人権リスクマップの中から優先度の高いリスクを優先課題として取り組んでいきます。
防止・軽減の取組み
人間尊重に向けた社員の相互理解をさらに深め、働きがいのある、働きやすい、いきいきとした活力溢れる職場づくりを目的として「サステナビリティ・人権研修(e-Learning含む)」を当社グループの社員を対象に、毎年、実施しています。
研修では、「グループ人間尊重ポリシー」を周知するほか、「ビジネスと人権」の概要、社会課題を反映したノーマライゼーション、LGBTQ+、ハラスメント、在留外国人やSDGsなど、数々の人権問題を広く学んでいます。
SOMPOホールディングスならびに主要事業会社は、グループ全体の多様性への理解浸透や意識向上を目的として、役員を対象に研修を開催しました。
保険引受・投融資を通じた人権リスク軽減への取組みとして、環境・社会に負の影響を与える可能性のある保険引受・投融資に関しては、注意を要する事業を特定しています。環境や社会に及ぼす悪影響を評価のうえ、慎重に対応しています。なお、対象事業における具体的な案件の特定においては、ステークホルダーとの対話をふまえ、アセスメントを実施しています。
当社グループでは、健康経営戦略に基づき、職場の安全・衛生と従業員の健康維持・増進に取り組んでいます。健康経営推進本部会議で示されたリスク評価の結果や取り組むべき重点課題などもふまえてKPIを設定し、実施している各種取組みの結果把握や効果検証を行っています。
2024年度の人権リスク評価では、全組織の79.5%において「従業員およびサプライチェーンの労働者の長時間労働」のリスクを特定しました。影響を受けるすべての組織が、長時間労働のリスクを軽減するための対策を策定し、実施しました。
ステップ3 実施状況と結果の追跡調査(モニタリング)
人権尊重の取組みに関する実態調査
グループのすべての事業を対象に人権リスクアセスメントをしています。各社各部門は自社の人権リスクの洗い出しを行い、人権リスクと判断されたものについて対応策を含む計画を立てています。対応策の計画策定率は100%となります。
ステップ4 情報開示
当社は「グループ人間尊重ポリシー」に則り、人権への負の影響に対処するための取り組みの進捗状況について、自社ウェブサイトやサステナビリティレポートにて報告しています。また当社は、英国現代奴隷法への声明を自社ウェブサイトで開示しています。このようなコミュニケーションを経て、評価プロセスの見直しと改善を行っています。
3.救済の仕組み
国連が定める「ビジネスと人権に関する指導原則」で求められている8つの要件に照らしあわせると、既存の内部通報制度では、実効性の観点から課題を残しており、見直ししていく必要性があることを認識しています。例えば、内部通報制度が「関与(エンゲージメント)と対話に基づくこと」の要件においては、ステークホルダーやNGOとの関係を構築し、当社グループの人権への取組みに関する仕組みや実績についての対話・協議を重視していくことが必要と考えています。
今後も、救済へのアクセスの機能向上に向け、指導原則が求める要件をふまえ、実効性のある内部通報制度の構築に向けて取組みを進めていきます。
ご意見・苦情の受付と対応
当社グループでは、グループ各社において、さまざまなステークホルダーから、人権を含めた苦情、相談やご意見を受け付けています。
例えば、損保ジャパンでは、お客さまからの当社グループの事業活動全般に関する不満足の申し出を苦情ととらえており、お客さまからお寄せいただいた苦情を真摯に受け止め、その傾向や内容を集計・分析して、業務・商品・サービスの改善につなげる取組みを推進しています。
従業員からの通報・相談態勢と是正措置
当社グループは、職場におけるハラスメントやいじめ・嫌がらせなどの問題行為に関する情報を早期に把握し、働きやすい職場環境を構築するため、コンプライアンス全般に関する通報・相談窓口に加えて、人権相談窓口を設置し電話やメールで個別相談を受け付けています。対応については、通報者・相談者の意向を確認しながら問題解決につなげています。
受け付けた通報・相談のうち、法令違反、社内規程違反、SOMPOグループコンプライアンス行動規範の精神に反する懸念や問題が疑われる場合には、会社は厳正かつ公正に調査します。
また、法令、行動規範、その他の社内規程に違反する行為が判明した場合、違反者は雇用契約および就業規則で定める基準および要件に基づき、解雇を含む懲戒処分の対象となる場合があります。
各通報制度の詳細
ステークホルダーとの対話
SOMPOグループでは、人権関連NGO・NPOの皆様との対話を通じてさまざまな人権課題や当該人権課題と各社の事業活動との関係、人権に関する負の影響等への理解を深め、各社の人権尊重の取り組みに活用しています。
2024年5月末までに、すべてのグループ企業を対象とした人権リスクについて、下記の2点について意見交換・ご助言をいただきました。
- グループ会社の事業内容から、各事業で新たに抽出すべき人権リスク
- 金融、保険業界全体で、特に重要または今後注視すべき人権課題
ステークホルダーからのご意見
意見交換にて明確化された人権リスクについては、2024年度の人権リスクの洗い出し項目に追加し、評価・分析を実施します。
- 介護事業では、労働時間や雇用条件、移民労働者、商品・サービスの安全性に関するリスクなども考慮する必要がある
- AIと人権は大きなトピックになっている。テクノロジーの開発の段階からありうる人権に対する負の影響を議論する必要がある
- 投融資先や保険引受先との人権リスクについての対話や、業種ごとの人権リスクに対する仕組みづくりが重要である
- 海外拠点や紛争と関わりのある地域での事業活動においては、厳格な人権DDの必要がある
- 幅広く一定の基準に沿ってサービスを提供している保険業界では、マイノリティの観点からみて差別にあたらないかを考慮する必要がある