気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への対応

 

当社グループは「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」に賛同し、気候変動に対するさまざまな取組みと透明性の高い情報開示に取り組んでいます。

気候変動に関する国際合意であるパリ協定の実現に向け、世界は脱炭素社会に大きく舵を切りました。気候変動は地球環境にさまざまな影響を及ぼすと同時に、水・食料や雇用、格差に至るまで、経済・社会に大きな影響をもたらします。このような複雑性の高い気候変動に対してはSDGsに見られる複合的アプローチが重要ととらえています。
当社グループでは、パーパス実現に向けた重点課題であるマテリアリティに「経済・社会・環境が調和したグリーンな社会づくりへの貢献」を定め、保険事業で培ったリスク管理のノウハウ、30年来にわたる地球環境への取組みを通じて得たステークホルダーとのネットワークに加え、中期経営計画で経営基盤に据えたSDGs経営を通じて、気候変動に対する複合的なアプローチを展開していきます。

気候変動への対応体制

当社グループは、取締役会が定める「SOMPOグループERM(戦略的リスク経営)基本方針」に基づくリスクコントロールシステムを構築し、当社グループに重大な影響を及ぼす可能性があるリスクを「重大リスク」と定義し、各事業の抱えるリスクをグループCRO(Chief Risk Officer)が網羅的に把握・評価したうえで、その管理状況を定期的に経営執行協議会(MAC)および取締役会などに報告し、対策の有効性などを検証しています。
想定を超える自然災害の甚大化および脱炭素社会への移行に伴うレピュテーション毀損や資産価格への影響などの気候変動リスクは重大リスクとして、役員が責任者となって対策を実施しています。グループCSuOを議長、グループ各社の役員をメンバーとする「グループサステナブル経営推進協議会」はマテリアリティをふまえ、主に機会への対応策を協議し、経営執行協議会(MAC)や取締役会などに報告する役割を担っています。

気候変動リスクおよび機会への対応

気候変動は自然災害の甚大化などのリスクだけではなく、脱炭素社会への移行に伴う産業構造の変化や新たな技術革新といったビジネス機会をもたらします。当社グループは、ストレステストやシナリオ分析を通じた損害保険事業におけるリスク管理に取り組むとともに、気候変動に伴うさまざまな変化をビジネス機会ととらえて商品やサービスの提供などに取り組んでいます。

(1)自然災害の甚大化への対応

当社グループの損害保険事業は、気候変動に伴う自然災害の甚大化などの影響を受けるリスクを内在しており、気候シナリオを活用した分析などに取り組んでいます。
風水災リスクに関しては、従来からストレステストを実施し、経営に重大な影響を及ぼすストレスシナリオが顕在化した際の財務的な影響を定量的に評価し、資本の十分性やリスク軽減策の有効性を検証しています。
2018年より、「アンサンブル気候予測データベース:d4PDF*1(database for Policy Decision making for Future climate change)」を活用し、気象・気候ビッグデータを用いた台風・豪雨に関する大規模分析を行い、中長期にわたり気温が2℃または4℃上昇した気候下における災害の平均的な傾向変化や極端災害の発生傾向を定量的に把握する取組みを進めています。
また、今後は、気候変動リスクへの金融監督上の対応を検討するNGFS(気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク)が検討を行っているシナリオ分析の枠組みも活用して影響の分析を進めていきます。なお、当社グループは、UNEP FI(国連環境計画・金融イニシアティブ)のTCFD保険ワーキンググループに参画しました。同ワーキンググループが2021年1月に公表した包括的ガイダンスに基づく定量モデル*2を用いた台風に関する影響度の試算も行っています。

  1. 文部科学省の気候変動リスク情報創生プログラムにて開発されたアンサンブル気候予測データベースです。多数の実験例(アンサンブル)を活用することで、台風や集中豪雨などの極端現象の将来変化を確率的にかつ高精度に評価し、気候変化による自然災害がもたらす未来社会への影響についても確度の高い結論を導くことができます。
  2. IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:国連気候変動に関する政府間パ ネ ル )のRCP8.5シナリオに基づき、2050年と現在との間の台風の発生頻度や風速の変化をとらえ、頻度や損害額の変化を算出するモデル。

(2)気候変動に関する機会への対応

当社グループは、中期経営計画において「人と自然が調和したカーボンニュートラル社会」への貢献を目指し、「SOMPO気候アクション」として、気候変動への「適応」、「緩和」、「社会のトランスフォーメーションへの貢献」の3つのアクションを掲げ、IPCCの「 共 通 社 会 経 済 経 路( SSP : Shared Socioeconomic Pathways)」などのシナリオを参考に、さまざまな取組みを行っています。

【アクション 1】気候変動への「適応」への取組み

旧来型の化石燃料に依存し、気候変動への対策が十分になされず、経済発展が鈍化した「地域分断社会シナリオ(SSP3)」においては、自然災害が激甚化し、十分なインフラ投資が行き届かず、社会の脆弱性が高まるとされています。このような社会においては、気候変動に対するレジリエンスを高める「適応」へのニーズがますます高まると考えられます。当社グループは保険やその周辺事業の知見・ノウハウを活用し、「適応」に資する商品・サービスの提供に取り組みます。

■気候リスクコンサルティングビジネスの拡大

SOMPOリスクマネジメントは、2018年から文部科学省の「気候変動適応技術社会実装プログラム(SI-CAT)」に参画し、気温が2℃または4℃上昇した際の気候予測データベースの活用や、研究機関との意見交換などを行いました。このような取組みを通じて得られた自然災害評価モデルや気候関連情報開示などに関するノウハウを活用し、リスクコンサルティングビジネスによる収益の拡大にも取り組んでいます。

■農業保険分野における取組み

海外保険事業の中核事業会社であるSOMPOインターナショナルは、2017年に農業保険分野における統合ブランド『AgriSompo』を立ち上げ、欧米に加えて南米、アジアへも拡大するなど持続可能な食糧供給体制への貢献に取り組んでいます。
また、損保ジャパン、SOMPOリスクマネジメントは国際協力銀行(JBIC)などとともに研究・開発を重ね、2010年より 東南アジアで『天候インデックス保険』の提供を行っています。2019年にはタイのロンガン農家向け、2021年にはサトウキビ農家向けへの提供を開始し、農業従事者の風水災や干ばつなどの自然災害リスクへの適応ニーズに対するリスク軽減に貢献しています。2015年には商業活動と持続可能な開発を両立する取組みとして「ビジネス行動要請(BCtA)」*3の認定を受けました。

*3商業活動と持続可能な開発を両立するビジネスモデルの構築を促進することを目指す国連開発計画(UNDP)が主導するイニシアティブ

【アクション 2】気候変動の「緩和」の取組み

環境と経済が調和する「持続可能な社会シナリオ(SSP1)」では、一定の経済発展のもと、気候変動への対策が効果的に講じられ、再生可能エネルギーや新たな技術開発が進展し、新たな保険ニーズが高まると考えられます。当社グループは、グループの温室効果ガス削減に向けた取組みを進めるとともに、再生可能エネルギーの普及拡大などを通じた気候変動の「緩和」に貢献します。

■グループの温室効果ガスの実質排出ゼロに向けた取組み

2021年4月に「2050年実質排出ゼロ」水準の温室効果ガス削減方針を表明し、2030年度に60%削減(2017年度比)の目標に向け、当社グループが使用する電力の再生可能エネルギーへの切り替えなどの対策を進めています。また、投融資先を含むバリューチェーンの実質排出ゼロを目指し、ステークホルダーと連携しながら削減に向けた取組みを進めています。

■風力発電事業者向け「ONE SOMPO WIND サービス」

損害保険商品の提供に加え、大学や研究機関などのステークホルダーとの共同研究により得られたノウハウを活用し、風力発電事業のプロジェクト組成から運転開始、その後の撤去またはリプレイスに至るすべてのプロジェクトフェーズを対象として、風力発電事業に関わるバリューチェーン全体へのリスクマネジメントサービスを展開しています。

【アクション 3】社会のトランスフォーメーションへの貢献

■環境・社会に悪影響を与える事業・セクターの特定と保険引受・投融資への活用

当社グループでは、自然破壊や人権侵害などの環境・社会に悪影響を与える可能性のある事業やセクターを定め、ステークホルダーとの対話や独自分析を通じてデータベースを構築し、保険引受や投融資の判断に活用しています。

■石炭火力発電所に対する保険引受・投融資制限方針(国内損害保険会社初)

損保ジャパンでは、気候変動への影響が懸念されている石炭火力発電所について、2020年9月に国内損害保険会社で初めて新規建設に対する保険引受・投融資を原則行わないことを公表しました。今後も、グループの事業を発展させる重要な機会であるステークホルダーとの対話を通じて、当社グループへの期待・要請を把握し、業界の脱炭素の取組みの促進などを通じた社会のトランスフォーメーションに貢献していきます。

■SOMPOアセットマネジメントのESGへの取組み

機関投資家が協働でエンゲージメント活動を行う「Climate Action100+」に参加し、投資先企業の温室効果ガス排出量の削減や長期計画の策定などへの働きかけを積極的に行っています。2017年9月に責任投資原則(PRI:Principles for Responsible Investment)が主導する「モントリオール・ カーボン・プレッジ」への賛同を表明し、長期投資を志向する「SNAMサステナブル投資マザーファンド」の受益権1万口あたりの温室効果ガス排出量、ファンド全体の排出量および加重平均カーボンインテンシティの算出、公表を継続的に行っています。

■30年来にわたる環境教育への取組み

1992年の地球環境室の設置以降、当社グループは気候変動をはじめとする地球環境問題の解決には、一人ひとりが自発的に行動することが重要と考え、NPOとの協働による環境人材の育成に継続的に取り組んでいます。

指標と目標

当社グループは「経済・社会・環境が調和したグリーンな社会づくりへの貢献」に向け、次の指標を掲げ、継続的に取り組んでいます。

温室効果ガス削減率(スコープ1・2・3)

  • 2020年度実績 15.2%削減 *1
  • 2030年度目標 60 %削減
  • 2050年度目標 実質排出ゼロ(投融資先を含む)

バリューチェーンでの削減への取組み

  • 紙使用量削減2020年度実績 25%削減 *1
  • 出張削減2020年度実績 70.7%削減 *1
  1. 削減率はいずれも2017年度比

再生可能エネルギー導入率

  • 2030年度目標 70 %以上
  • 2050年度目標 100 %

環境教育への参加人数 *2

  • 2020年度末実績 77,080名(累計)
  • 2021年度目標 11,500名

*2日本の希少生物種の保全活動「SAVE JAPANプロジェクト」と「市民のための環境公開講座」への参加人数。

投融資先エンゲージメント数 対前年度比増加

生物多様性への取組み

■リスクの概要と評価

2021年1月に世界経済フォーラムが発行した「グローバルリスク報告書2021(第16版)」において生物多様性の喪失が今後10年間で最も発生する可能性が高く、かつ最も影響が大きいリスクのトップ5の一つに挙げられています。
グローバル社会では、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)、国連開発計画(UNDP)、グローバル・キャノピー、世界自然保護基金(WWF)の4団体が主導し、企業が自然への依存度や影響を評価、管理、報告するための枠組みを検討する「自然関連財務開示タスクフォース(TNFD)」の議論が進められており、2022年末までに自然と生物多様性関連の開示のためのフレームワークとガイドラインを発行する予定となっています。
生物多様性の問題は、食料や水の供給、気候の安定などの効用があることから、その毀損が将来の気候変動を加速させる可能性があり、経済の観点からも危機感が高まっています。当社では、生物多様性に関連リスクを、グループに大きな影響を及ぼす可能性のある「エマージングリスク」と位置付けています。
また、機会の観点から、悪影響を及ぼす脅威に対する新たな財物・賠責保険ならびにコンサルティングサービスの提供、生物種保護に向けたESG投資などが考えられます。

■生物多様性への取組み

当社グループは、1990年代から気候変動などの地球環境問題に取り組んでおり、2010年からNPOとの協働による生物多様性保全活動「SAVE JAPANプロジェクト」に継続的に取り組んできました。2020年9月にはグループのサステナビリティ強化として、ラムサール条約やUNESCO世界遺産条約に登録された自然環境の保護・保全状況に務め、取引先・投資家への適切な対応を促す趣旨の方針を公表し、環境に負の影響を与える事業(ESGリスクの高い事業)を特定し、保険引受・投融資プロセスにおけるアセスメントを実施しています。
また、2021年1月には、生物多様性に関する産業界の声を集約して野心的な政策提言を行う団体であるBusiness for Natureにおいて戦略アドバイザリーグループに参画する他、WBCSD(持続可能な発展のための世界経済人会議)のNature Actionプロジェクトにも参加をしました。多様なステークホルダーとの対話を通じて、生物多様性への取り組みを強化しております。今後、生物多様性影響に係わる政府方針・消費者選好の変化、規制の厳格化の影響シナリオと、それらに対応した商品・サービスの開発機会について検討を進めて参ります。

気候変動対策へ向けたリーダーシップ

イニシアティブや国際会議を通じたリーダーシップ

気候変動問題を解決するには、さまざまな主体が連携して取り組むことが重要です。国内外のさまざまなイニシアティブや国際会議において気候変動対策が議論されるなか、当社グループは率先してイニシアティブなどに参画し、主導的役割を担うよう努めています。
主な取組みを紹介します。

CDP(気候変動)への参画およびTCFDへの賛同表明

世界の機関投資家が、企業に気候変動への戦略や温室効果ガス排出量の公表を要請するプロジェクト「CDP」において、2005年から損保ジャパンは機関投資家として参画しています。また当社グループは、回答企業として、気候変動質問書2016年から4年連続Aリストに選定されるなど、高い評価を獲得しています。
当社グループは、2017年6月の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言報告を受け、TCFDへの賛同を表明するとともに、UNEP FI(国連環境計画・金融イニシアティブ)のTCFD保険ワーキンググループに参画し、保険業に於けるTCFDのスタンダード策定に取り組んでいます。

パリ協定「2℃目標」達成へ向けたイニシアティブ参画

当社グループは、2017年に環境省が主導するSBT(Science Based Targets:科学と整合した目標設定)策定支援事業に参画しました。2018年には、SBTiへのコミットメントレターを提出するとともに、金融セクターガイダンス策定*への参画を表明しました。また、2018年度より、SBTi(パリ協定に整合した意欲的な目標を設定する企業を認定する国際イニシアティブ)の推奨する削減水準に基づき、2030年、2050年をターゲットとする中長期GHG削減目標を新たに設定しました。

  • 金融セクターにおけるSBT認証のためのガイダンスは開発中であり、SBTiによる認証は得られない。(2019年7月時点)

2018年7月に、気候変動対策に積極的に取り組む企業や自治体、NGOなどの情報発信や意見交換を強化するため、ネットワーク組織「気候変動イニシアティブ」が設立されました。当社グループは、当該イニシアティブの趣旨へ賛同し、設立メンバーとして参加しています。

Caring for Climateへの参画

国連グローバル・コンパクト(UNGC)、国連環境計画(UNEP)、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が設立した気候変動への企業の役割向上を目指すイニシアティブ「Caring for Climate」において、損保ジャパンCSR室シニア・アドバイザーの関正雄が運営委員会メンバーとなっています。

COP(気候変動枠組条締約国会議)への参画・発信

損保ジャパンは2016年11月にモロッコのマラケシュで開催された気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22)のサイドイベントとして環境省が主催した、適応への日本企業の貢献に焦点を当てたセッションに登壇しました。また、COP22の会期中に開催されたCaring for ClimateのHigh-Level Meeting on Climate Changeに、運営委員会メンバーとして参画しました。
2017年11月にドイツのボンで開催されたCOP23のサイドイベント(JICA主催)において、SOMPOリスクマネジメントが「気候変動適応策としての農業保険と官民パートナーシップ」を題材に登壇しました。
2018年11月にエジプトで開催された生物多様性条約第14回締約国会議(COP14)では、経団連自然保護協議会会長として参画し、開幕に先立って行われた「Global Business and Biodiversity Forum」では、経済界代表として、「経団連生物多様性宣言・行動指針」改定版の概要、および「日本産業界の『生物多様性の主流化』の進捗状況に関する調査結果」について発表しました。また、2年に一度開催される条約会議では、世界各国から多くの政府関係者や民間機関などが参画しており、世界の自然保護の推進に大きな影響力を持つ諸団体の代表とダイアログも行いました。

「Global Business and Biodiversity Forum」でスピーチを行う二宮雅也

イニシアティブが発行するレポートでの掲載

東南アジアの天候インデックス保険の取組みは、以下のレポートで紹介されています。