当社グループでは、気候変動リスク・機会に対し複合的なアプローチを実践するため、2021年度より「SOMPO気候アクション」(気候変動への「適応」、「緩和」、「社会のトランスフォーメーションへの貢献」)を掲げ、グループ全体で戦略的に取組みを進めています。
気候変動への「適応」
当社グループは、協働を通じた商品・サービスの開発・提供により、社会のレジリエンス力向上を支援しています。『AgriSompo』による農業保険のグローバル展開を通じた食料安定供給への貢献や、洪水や台風などの気候変動物理リスクによる財物や企業活動への将来の影響をWeb上で気軽に定量化し、可視化できるプラットフォーム『SOMPO SUSTAINA』を提供しています。そして、企業が持続的な成長を遂げるためのさまざまな課題解決に貢献し、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
気候変動の「緩和」
グループの2050年温室効果ガス(GHG)実質排出ゼロに向けた取組み
自社のGHG排出量については、スコープ1,2,3(除く保険引受・投融資)で2030年60%削減(2017年比)*、2050年実質排出ゼロにする目標を掲げています。その実現に向け、GHG排出において特に占める割合の大きい電力消費に関して、LED化などの省エネルギーへの取組みに加え、「2030年までに再生可能エネルギー導入率70%」の目標を掲げ、所有ビルの電力を再生可能エネルギー由来に切り替えるなど、目標達成に向けたロードマップに沿って取組みを進めています。
- パリ協定の1.5℃目標水準(毎年4.2%以上削減)に整合する科学的根拠に基づく目標。
取引先や社会のグリーン移行促進に向けた取組み
■投融資
投融資ポートフォリオのGHG排出量(スコープ3カテゴリー15)実質ゼロに向け、排出量を2025年25%削減(2019年比)する中間目標に加え、新たな中間目標として「インテンシティを2030年50~60%削減(2019年比)」を2024年度に設定しました。目標達成に向け、株式保有先のうちGHG高排出の上位20社を中心とするエンゲージメントや、グループが保有する運用資産を入れ替える際のGHG低排出セクターへのシフトなどの取組みを進めています。
<中間目標に関する詳細>
目標年 |
2025年 |
2030年 |
目標値 |
▲25%削減 |
▲50~60%削減 |
基準年 |
2019年 |
2019年 |
対象資産 |
上場株式、社債 |
上場株式、社債、上場企業向け融資、上場株式・社債ファンド |
指標 |
排出量 |
インテンシティ(投融資額1単位あたりのGHG排出量) |
- インテンシティは、投融資残高の増減などに影響を受けにくい指標です。投融資ポートフォリオのGHG排出量を削減するだけではなく、投融資先や社会のグリーン移行を同時に促進していくため、GHG排出量の排出効率を示す指標として設定しました。
なお、GHG排出量は2025年以降も実績を算定し報告していきます。
- 目標値は、パリ協定の1.5℃目標水準として、国際的な投資機関のイニシアティブ「NZAOA(ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス)」の指針に基づいて設定しています。
■保険引受
脱炭素に資する保険商品の保険料収入を2026年度に国内・海外で250億円にする「トランジション保険目標」を設定し、『ONE SOMPO WINDサービス』(洋上風力発電事業者向け保険・リスクマネジメントサービス)をはじめとする再生可能エネルギーや省エネルギーの普及に貢献する商品・サービスの展開に取り組んでいます。
また、保険引受先でGHG排出量(スコープ1,2)を開示している企業のデータを活用して、保険引受におけるGHG排出量(Insurance-Associated Emissions)の算定*を行っています。
- 2022年11月に金融向け炭素会計パートナーシップ(PCAF)が開発した企業保険分野のGHG排出量を計測する手法を用いて算定。
社会のトランスフォーメーションへの貢献
投資先企業とのエンゲージメント
損保ジャパンは、日本版スチュワードシップ・コードの趣旨に則り、株式を保有する企業の企業価値向上および持続的成長に関する取組方針と状況を確認するために、毎年ESGアンケート(「ESG/サステナビリティへの取り組みに関する調査」)を実施しています。2023年度は株式を保有する1,446社にアンケートを送付し、318社から回答が得られ、各企業側のニーズの把握・協業の機会につなげ、脱炭素を含めたサステナビリティへの取組みを支援しています。
ESGに関する保険引受・投融資等の方針
当社グループでは、「グループサステナビリティビジョン」をはじめとしたポリシーを策定し、気候変動、人権、地域社会に配慮した対応の考え方を示しています。特に保険引受・投融資における気候変動リスクを管理するため、以下の「ESGに関する保険引受・投融資等の方針」を掲げ、取組みを進めています。
- 石炭火力発電所および炭鉱開発(一般炭)*1については、新設・既設にかかわらず、新規の保険引受・投融資を停止
- オイルサンドと北極圏監視評価プログラム(Arctic Monitoring and Assessment Programme)エリア*2でのエネルギー採掘活動*3への新規の保険引受・投融資を停止
- 2050年までにGHG(温室効果ガス)ネットゼロを達成する目標への取組みがない、石炭事業を主業とする企業*4や、北極野生生物国家保護区(Arctic National Wildlife Refuge)のエネルギー採掘活動に関わる企業の保険引受(新規・更新)*5・投融資を停止
- 二酸化炭素回収・利用・貯留技術(CCS・CCUS)、アンモニア混焼などの革新的な技術を有するなど、パリ協定の実現に資するGHG(温室効果ガス)削減効果が見込める場合には、慎重に検討し対応する場合があります。
- ただし、ノルウェー域内は除きます。
- エネルギー採掘活動とはエネルギーを採掘するプロジェクト単体を指します。
- 収入の20%以上を石炭火力発電、一般炭鉱山およびオイルサンドの採掘から得ている企業、 または発電の20%以上を石炭でまかなっている企業が対象です。
- 個々の社員の健康や福祉を支援する保険(労災保険など)には適用されません。
また、保険引受・投融資などの事業において環境・社会に負の影響を与える可能性のある事業を特定しています。
該当する場合は、環境や社会に及ぼす悪影響を評価のうえ、慎重に対応しています。さらに、ステークホルダーからの情報収集や意見交換を通じ、自社事業において重要性が高いと認識された事案をもとに、「グループサステナブル経営推進協議会」およびその下部組織で協議し、ESGリスク案件の更新や注意を要する事業を特定、各種ポリシーの見直しを定期的に実施しています。
詳細は「事業におけるESG配慮」をご参照ください。
ルールメイキングへの積極的な関与
ネットゼロ社会の実現に向けて、世界のさまざまな組織や団体などにおいて、規制やガイダンス策定などの議論が活発に行われています。
当社グループは、2021年に金融機関の投融資および保険引受のポートフォリオを通じたGHG排出量を計測する手法を開発している国際的なイニシアティブである金融向け炭素会計パートナーシップ(PCAF)が発足させた「PCAF Insurance-Associated Emissions Working Group(保険の引受を通じたGHG排出量の測定・開示のための国際基準を策定するワーキンググループ)」にアジア初のメンバーとして参画しました。
2022年には、2050年までにGHG排出量のネットゼロを目指す金融機関のグローバル連合であるGlasgow Financial Alliance for Net Zero(GFANZ)傘下の団体に加盟しました。
これらのルールメイキングに対して積極的に関与しリードすることにより、社会のトランスフォーメーションに貢献するとともに、これらの取組みを通じた知見の蓄積やレピュテーションの向上によってパートナーを呼び込むなどグループのビジネス機会の創出・拡大を図ってまいります。