SOMPOグループの源流は、1888年に創業した日本初の火災保険会社である東京火災にさかのぼります。130年以上にわたり、複雑なリスクや課題に直面しながらも、お客さま、社会、株主、ビジネスパートナー、社員を含むステークホルダーからの期待に応え、パーパスである「“安心・安全・健康”であふれる未来へ」の実現に注力してきました。引き続き、どのような環境下においても人々や社会に価値を提供し続けられるよう、SOMPOグループとしての「レジリエンス(強靭性)」の向上に取り組んでまいります。
企業としての「レジリエンス」を実現するための鍵となるのは、企業文化であり社員の成長です。自らの志を実現するための学びや努力を継続し、プロフェッショナルを目指すことの重要性や意義を社員一人ひとりが深く理解し、実践する企業文化を築き上げることが重要です。新たな経営体制下においてはSOMPO P&C、SOMPOウェルビーイングの2つのビジネス領域を軸に「つなぐ・つながる」とグループ内からの学び合いをさらに強化し、「日本発の真のグローバルカンパニー」への進化を目指します。
私は、グループの多様性を活かし、レジリエンスを高め、国境や事業を越えてつながり学び合う企業文化を醸成することで、SOMPOグループをより強固で革新的なグループへと成長させ、「“安心・安全・健康”であふれる未来」の実現に貢献し、次世代に襷をつないでいきます。
「“安心・安全・健康”であふれる未来」の実現のために 不可欠なレジリエンス
私たちSOMPOグループの源流は、1888年に日本初の火災保険会社として創業した東京火災にさかのぼります。当時の社会課題であった町の大火に対して、人々に「安心
を届けたい」という想いで創業しました。
現代社会においても、世界はさまざまなリスクと不安にさらされています。地政学リスクの高まりや気候変動、さらにはAIを含めたテクノロジーの飛躍的な進展など、これ
までの延長線では想像できなかったことが、非連続に発生し続けています。
例えば、気候変動問題。自然災害による2024年度の世界の経済損失は激甚化・頻発化等の影響もあり3,180億米ドルに至るなど深刻な状態です。直近は緩和傾向にあるものの、自然災害による損害を補償する保険収支の世界的悪化が保険市場のハード化と保険料高騰を招きました。そうした状況も一因となり、お客さまが自然災害に対する補償やサービスを受けることが難しくなるいわゆるプロテクションギャップが拡大しています。私たち保険業界としてしっかりと向き合っていかなければならない重要な社会課題であると認識しています。
また、確実に迫ってきているのが人口動態の変化です。日本においては少子高齢化の急速な進展に伴うさまざまな課題が顕在化しています。2023年度の医療費支出は10年前との比較で約20%増加となる47.3兆円に達し、医療保険制度や介護保険制度などの持続可能性に対する漠然とした不安が高齢者だけではなく若い世代にも広がっています。
このように複雑で解決が難しい課題を抱える現代社会においても、SOMPOグループは創業時の「安心を届けたい」という想いを胸に、「“安心・安全・健康”であふれる未来へ」というパーパスの実現に向けて取り組んでいます。そして、私たちが、お客さま、社会、株主、ビジネスパートナー、社員など、すべてのステークホルダーからの期待に
応え、SOMPOグループが社会から必要とされ、信頼され、持続的に安心をお届けできる存在であり続けるためには、グループ全体の「レジリエンス」を高めること、つまり私たち自身が強靭さとしなやかさを兼ね備えることが不可欠です。これは、単に売上の拡大や、ビジネスモデル・保険引受の高度化による収益力向上といった側面にとどまらず、変化する環境にフレキシブルに対応できる組織体制の構築など、より幅広い「レジリエンス」を意味します。
レジリエンス向上の鍵となる企業文化とMYパーパス
これからは、時代の流れがより一層速くなり、そのなかでお客さまのニーズは絶えず変化し続けると思います。そのような状況下においてレジリエンスを高める鍵となるのは企業文化であり、そこで働く社員です。今ある課題にソリューションを提供するだけでなく、組織としてもそこで働く私たち一人ひとりとしても、常に進化し成長し続ける意志を持つことが必要であり、そのような価値観であふれる企業文化を創りあげていきたいと考えています。
企業価値向上には、競争優位性が重要であり、そのためには専門性や生産性の向上が不可欠です。しかし、より重要なことは「真のお客さまニーズは何か」を常に意識して考え抜き、その解決に取り組んでいこうとする強い意志であると思います。これを組織として徹底していくことで社員一人ひとりの専門性や生産性が自ずと高まっていきます。
このような企業文化への変革の起点となるものが「MYパーパス」です。私はスポーツ界の方々とご一緒させていただく場面がありますが、一流のアスリートから、自分を客観的に評価すると同時に自分自身の志を定め、目標を設定し、その達成に向けて全力で努力することの重要性を学んでいます。ビジネス界においても同じことが言えると考
えます。この世に生を受け、家族のため、友人のため、社会のために、何らかの貢献をしたいという想いは誰にでも潜在的に存在し、それを達成するために「自分がこうなりたい」という志が「MYパーパス」です。自分と真摯に向き合い、自分を客観視して、足りない点を努力して克服していく。そしてそのような社員に対しては会社が機会を提供していく。社員は会社のパーパスとシンクロさせながら、「MYパーパス」をどんどん進化させて、その実現に向けた学びや努力を続けていく。これこそが真のプロフェッショナルであり、私を含む経営陣が率先垂範で取り組んでいくことで、SOMPOグループで働くすべての社員に浸透させていきたいと思います。
また、SOMPOグループでは2022年から社内表彰制度「SOMPOグループアワード」を実施しています。国内外のグループ社員のチャレンジを知り、称え合うことで、グループとしての一体感や挑戦することの意義を役員・社員に感じてもらう場です。2025年2月に開催した表彰式では、損害保険やリスクマネジメントサービス、デジタルを活用した新事業など、SOMPOグループのパーパスの実現に貢献するために、それぞれの持ち場で必死に努力しているSOMPOグループの仲間たちの想いを目の当たりにしました。彼らのような社員がより一層頑張ることができる環境を提供していくことが経営者である私に課された役割のひとつであり、同時にこのような輪を広げ、グループの社員一人ひとりがプロフェッショナルを目指すことの重要性や意義を理解し実践する企業文化を根付かせていきたいと強く感じました。このような取組みを積み重ねていくことが、SOMPOグループ全体のレジリエンスの向上につながっていくと信じています。
中期経営計画の進捗
2024年5月に公表した中期経営計画では、「レジリエンスのさらなる向上」と「つなぐ・つながる」をゴールに、2026年までにSOMPO P&CとSOMPOウェルビーイングという2つのビジネス領域における成長を通じて、修正連結ROEを13~15%、修正EPS成長率を年平均+12%超(いずれもIFRSベース)という経営数値目標を掲げました。中期経営計画の初年度にあたる2024年度の修正連結利益は、海外保険事業での増益が寄与し、期初計画を上回るとともに過去最高益となる3,343億円(日本基準ベース)となりました。なお、2025年度の修正連結ROEは10%程度、現中期経営計画期間の修正EPSについては年率+14%成長のペース(いずれもIFRSベース)を見込んでいま
すが、引き続き達成に向けて取り組んでいきます。
また、政策株式の売却により生じる資金を活用した成長投資や、より収益が見込まれる事業に資本を振り向けるなどして、2030年度には修正連結利益5,000億円水準、時価総額6兆円水準を達成することをコミットいたしました。この目標は中期経営計画を公表した2024年時点のものからそれぞれ2倍の水準にあたりますが、堅実かつ安定的な成長により、必ず達成しなければならないと思っています。
その達成に向けて、2024年に財務、コミュニケーション、内部監査の領域でグローバルな視点を持つ最適人材を登用し、さらには海外保険事業の知見・ノウハウを国内損害保険事業で活用するなどセンター・オブ・エクセレンスに言行一致で取り組んできました。
「日本発の真のグローバルカンパニー」に向けた新経営体制
しかし、前述のとおり事業環境の変化にフレキシブルに対応し、お客さまの真のニーズに応えるソリューションを提供できるレジリエンスを具備した企業グループへの変革を遂げるためには、さらなる進化が必要です。そこで、「つなぐ・つながる」をより一層加速させ、多様な国や地域、多様な事業を抱えるSOMPOグループの強みを活かしてグループ内のベストプラクティスに学ぶ態勢をさらに強化していくために、早期に新たな経営体制に移行することを決断し、中期経営計画初年度にあたる2025年2月に公表しました。
この新経営体制下においては、SOMPO P&CはSOMPOインターナショナルCEOのシェイさんに、SOMPOウェルビーイングは国内生命保険事業を率いてきた大場さんにビジネスCEOを担ってもらい、グループCEOとしての権限の一部を2人に委譲しました。そして私は、業務改善計画の着実な実行に加え、センター・オブ・エクセレンスの推進やベストプラクティスを学び合う企業文化の醸成、多様な意見や異なる価値観を取り入れるための性別・年齢・国籍にとらわれない人材登用の推進、そして今後の事業のあり方の大胆な転換や生産性の飛躍的向上をもたらすであろうデジタル・データ・AIの活用など、グループの変革に資する重要戦略の推進により多くの時間を割くこととしました。
私の志はSOMPOを「日本発の真のグローバルカンパニー」つまり、利他の精神など日本が持つ強みを保ちながら、グローバルで変わりゆくお客さまニーズに応えることができる企業へと変革することであり、これらの重要戦略を言行一致で完遂することで必ず実現していきます。
SOMPO P&CとSOMPOウェルビーイングで目指していくこと
SOMPO P&Cでは、「面の拡大」、つまり地理的拡大と分散を図ることに加え、防災・減災、事故の予兆把握、保険と同時に提供する駆けつけサービスなど、保険の前後のサービスの拡大を進めていくことで、お客さまに長く深くお付き合いいただけることになると考えています。そのために世界各国で展開しているSOMPOグループ各社のベストプラクティスを国や地域を越えて学び合うことに取り組んでいます。例えば、損保ジャパンが取り組んでいるSJ-R(一連の問題を受けビジネスモデルや企業文化の変革等を目指すプロジェクト)では、収益基盤と事業基盤の変革により旧来型のビジネスモデルから脱却し、独自性とレジリエンスの高い会社を目指していますが、このプロジェクトの大きな課題のひとつが保険引受のポートフォリオの変革です。これまでに保険引受の高度化やタイムリーな保険料率の改定の仕組みに関してSOMPOインターナショナルが持つノウハウを活用するなどしてきましたが、このようなセンター・オブ・エクセレンスの取組みをシェイさんのリーダーシップによってさらに加速させます。
SOMPOウェルビーイングでは、日本における少子高齢化という現代の社会課題から生じる3つの「不」に対するソリューションを提供していくことを2024年に公表しました。戦後50歳強であった平均寿命は、医療の進展や食糧事情、公衆衛生の改善などの先人たちの努力によって30年以上伸び、今私たちは人生80年、100年という時代を生きています。その一方、少子高齢化の進展に伴って、本来であればみんなで祝うべき長生きが多くの不安をもたらす事態になっています。「ずっと健康でいられるのだろうか(健康の不)」、「介護が必要になったときにサービスを受けられるだろうか(介護の不)」、「老後の資金は十分にあるのだろうか(老後資金の不)」という3つの「不」です。この不安に対してグループの総力をあげて応えていかなければならないと思います。長きにわたってSOMPOひまわり生命を率いてきた大場さんのリーダーシップにより、3つの「不」に対するソリューションをビジネスとして実装し、着実に実績を積み重ねていくことで、SOMPOウェルビーイングを収益の柱としていきます。
次世代に、より良い社会を引き継いでいくために
私たちは今、先人たちの志と努力によって創りあげられた豊かな社会を生きることができていますが、これを今よりも良い状態で次の世代に引き継いでいきたいと思います。またグループCEOとしてSOMPOを、時代の変化に左右されることなく、人や企業を取り巻くさまざまなリスクや不安に対して安心を届け続けられるような存在にして、次の世代に引き継いでいかなければならないと思います。そのために私が成し遂げなければならないことは、グループの変革です。SOMPOの多様な事業が持つ強みを活かしてレジリエンスを高め、社員が国境や事業を越えてつながり学び合う文化を醸成することで、より強固で革新的なグループに変革できると確信しています。そして、「“安心・安全・健康”であふれる未来」の実現に貢献し、次世代に襷をつないでいきます。