グループCEOに就任した2024年以降、私は「不都合な真実」から決して目をそらさないことを貫き、常に自らに問い続けてきました。
2023年以降に露呈した自動車保険金の不正請求や保険料調整行為、保険契約情報等の不適切な管理といった一連の問題は創業以来の危機であると真摯に受け止め、改革を進めてきました。長年根付いていたトップライン(売上)偏重の文化や同質性の高い組織における上意下達の風土、現状維持バイアスによる旧態依然としたビジネスモデルの限界といった課題が顕在化したことを痛感しています。
これらの内部課題に加え、変化する外部環境にも向き合ってきました。激甚化する自然災害は人々の安心・安全な生活をおびやかすだけではなく、損害保険事業の根幹を揺るがしています。ほかにも、地政学リスク、インフレーションの加速、生成AIなどのテクノロジーの進化、さらには日本国内では人口減少や少子高齢化が不可逆的に進行しています。そして、このような環境変化のなか、お客さまのニーズは大きくかつ確実に変化しています。
私は、役員・社員一人ひとりがこれらの課題を「自分事」としてとらえ、行動することの重要性を説き続けています。そして、自ら先頭にたち、これらの真実から目をそらすことなく、不退転の覚悟で変革を完遂することこそがグループCEOとしての最大の責務だと考えています。
変革の成果と、確かな手ごたえ
2024年度は「信頼回復」と「変革」への覚悟を社内外に示した年でした。SOMPOホールディングスがグループ全体の情報を的確に把握し、グループベストの意思決定ができる体制へとグループガバナンスを抜本的に見直すとともに、業務改善計画に基づく信頼回復に取り組んできました。中期経営計画では「レジリエンスのさらなる向上」と「つなぐ・つながる」をそのゴールに掲げ、損害保険ジャパンでは、事業基盤と収益基盤の変革を目指す再生プロジェクト「SJ-R」が始動しました。
続く2025年度は、これらの変革が具体的な成果として表れた年でした。業績面では修正連結利益が5,352億円と過去最高益を更新し、2030年度の目標である5,000億円を5年前倒しで達成しました。2026年度目標を13~15%とした修正連結ROEは13.4%に到達しました。時価総額は約5.3兆円(2026年3月末・自己株式を除く)に達し、中期経営計画策定時(2024年3月末)の約3.1兆円の1.7倍へと大きく成長することができました。
この成果は、自然災害の減少といった外部要因のみならず、損害保険ジャパンが全社一丸で着実に進めている「SJ-R」を通じた収益力の回復や、SOMPOインターナショナルの順調な成長が牽引したものですが、国内生命保険と介護を含む主要4事業のすべてが対前年度比で増収増益を果たし、グループの成長に寄与しました。
修正連結利益
(億円)
時価総額
(兆円)
当社は2025年4月に「SOMPO P&C」「SOMPOウェルビーイング」の2分野にビジネス領域を集約した新たな経営体制に移行しました。この変更は、国内損害保険、海外保険、国内生命保険、介護という事業セグメントによって生じていた「サイロ」を壊し、「つなぐ・つながる」を加速させ、国・地域や事業を越えてお互いに学び合う「センター・オブ・エクセレンス」を追求するとともに、真のお客さまニーズに応えられるグループへと進化を遂げるための大きな決断でした。業績という揺るぎない事実がこれまでの変革の正しさを証明し、社員が「会社は変われる、自分たちが未来を創る」という確かな手ごたえを感じることができた1年であったと感じています。
2025年3月以前の経営体制
2025年4月以降の経営体制
次なる飛躍へ向けた基盤整備の1年に
この成長の軌道を確固たるものとし、さらなる企業価値向上を果たすうえで、2026年度は極めて重要な年です。中期経営計画でコミットした経営数値目標(修正連結ROE13~15%/修正EPS成長率12%超)の達成に加え、次なる飛躍に向けた基盤の整備に注力していきます。
SOMPO P&Cでは、SheaビジネスCEOのもとで、地理的拡大によるオーガニック成長に加え、2025年度に買収したAspenのPMIを進め、再保険事業におけるコスト削減・アンダーライティング高度化などの統合シナジーの早期実現を図ります。損害保険ジャパンでは、業務改善計画を着実に実行するとともに、「SJ-R」を通じた事業基盤と収益基盤の変革を加速させ、収益性とお客さまへの提供価値をさらに高めていきます。
SOMPOウェルビーイングでは、健康・介護・老後資金に関わる3つの「不」の解消に向けて、2025年度までにRIZAPグループ株式会社や株式会社鎌倉新書との資本業務提携や、新会社(SOMPOウェルビーイング株式会社)の設立などの基盤構築を進めました。2026年度は大場ビジネスCEOのリーダーシップにより、SOMPOひまわり生命やSOMPOケアがもつ強みとこれらの基盤を融合し、顧客接点の拡大とビジネス実装に取り組んでいきます。
加えて、将来の成長ドライバーとしての新たな事業創造も加速させます。2025年度は、気候変動の影響などにより安定供給がおびやかされている「食」に関する社会課題の解決に向け、株式会社農業総合研究所をグループに迎え入れました。2026年度もSOMPOのパーパスの実現に貢献する事業創造に積極的に取り組んでいきます。
このような成長投資のための資本の創出に向け、政策株式の売却も進めています。売却により創出された資本は、P&Cの規模の拡大や地理的分散に資する案件およびウェルビーイング領域のミッシングピースの獲得にも配分していきます。M&Aは目的ではなく持続的成長のための手段です。戦略性と経済合理性を厳しく見極めたうえで実行していきます。
これらの基盤整備を進め、2030年度には、修正連結利益を前中期経営計画期間(2021~2023年度)の平均水準(2,500億円程度)の3倍、2024年3月末の時価総額(約3.1兆円)の3倍を目指します。
AIとの共生の時代における人的資本の最大化
事業の成長を加速させる鍵は、間違いなくデジタル・データ・AIの徹底活用です。生産性を飛躍的に高めるだけでなく、SOMPOならではの新しい顧客体験価値を創造し、ビジネスモデルを次の次元へ進化させていきます。テクノロジーが進化し人とAIとの共生が進むほど、「人」にしか果たせない役割が重要になると認識しています。AIがルーティン業務を担うなか、「人」にしか持ちえないゼロから解を生む創造力、周囲を巻き込む熱量あるいは共感力といったものが競争力の源泉になります。
「人」というグループ最大の非財務資本を高めるべく、2024年度に立ち上げたのが300億円規模の「SOMPO人材ファンド」です。引き続きSOMPOの価値観である「誠実・自律・多様性」を体現し、AIとの共生の時代に真の価値を創造しうるプロフェッショナル人材を積極的に育成していきます。
また、社会のため、会社のため、そして自らの成長のために挑戦する社員を後押しし、その成果を還元するため、2026年度から国内グループ会社の社員を対象に株式報酬制度を導入しました。社員がオーナーシップを持って付加価値を創出し、その価値を株主の皆さまと分かち合い、社員自身の資産形成にも寄与するという好循環を構築していきます。
課題の最前線から進化の最前線へ
次なる飛躍に欠かせないグループの結束をより一層高めるために、2027年4月に「SOMPOホールディングス株式会社」から「SOMPOグループ株式会社」への社名変更を実施します。また、社員一人ひとりが自らの持つ無限の可能性を信じて挑戦し、会社は社員の挑戦をサポートするという意志を込めて、グループビジョン「未来の可能性を解き放つ(The vision to unlockpossibilities)」を、そしてグループで取り組む重要課題として「SOMPOのマテリアリティ」を新たに策定・公表しました。持株会社と事業会社、あるいは事業間の垣根を越えた連携と、社員一人ひとりの課題解決に向けた挑戦を加速させ、「ONE SOMPO」でパーパスの実現と持続的成長という共通のゴールを目指していきます。
私たちSOMPOグループの源流は、1888年に日本初の火災保険会社として創業した東京火災です。当時の社会課題であった火事から人々を守る「世のため、人のため」の精神で創業し、その後も保険や介護を通じて変化する社会課題に向き合いながら成長を遂げてきました。
SOMPOグループのマザーマーケットの一つである日本は、自然災害の激甚化や少子高齢化によるさまざまな問題が顕在化している課題先進国です。しかし私はこれを悲観していません。むしろ社会課題に対する「解」を磨き上げ、世界に先駆けて提供する絶好の機会だととらえています。
例えば、損害保険ジャパンの「HIKESHI DNA 2030 Project」で取り組んでいる防災・減災から復旧支援までのシームレスなソリューションや、SOMPOケアのテクノロジー活用による高い品質と生産性を両立した介護サービスは、世界でもかけがえのない価値を持ちえます。SOMPOグループの多様な事業が国や地域を越えてつながり、課題解決のソリューションをグローバルに提供する「世界のレジリエンスとウェルビーイングのプラットフォーム」へと進化する。これが2030年のその先に私たちが見据える姿です。
実現の鍵は、創業の精神「世のため、人のため」を胸に、SOMPOグループの一人ひとりがお客さまの真のニーズを考え抜き、挑戦していくことにあります。国・地域や事業の垣根を越えて協力し合うチームワークも不可欠です。そして、その根底には、同調圧力を恐れず「事実(データ)と仮説(構想)」に基づき率直に議論し、挑戦を称賛する「和して同ぜず」「Harmony, butnot Conformity」の企業文化が欠かせません。
「世界のレジリエンスとウェルビーイングのプラットフォーム」へ。私は「世のため、人のため」の精神を貫き、SOMPOグループを、多様な社会課題に向き合い、真のお客さまニーズに応えるソリューションを提供し続ける企業グループへと進化させていきます。そして、その担い手である社員たちの挑戦を、全力で支え続けていきます。
グループCEOメッセージ動画
ステークホルダーの皆さまへ向けた、グループCEOからのメッセージ動画はこちらからご視聴いただけます。