SDGs達成へ寄与するリーダーシップ

~特別対談:SDGs達成のための課題~

IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]
兼 ソシオ・マネジメント編集発行人
川北 秀人氏*

経団連企業行動・CSR委員長
損害保険ジャパン日本興亜株式会社
代表取締役会長
二宮 雅也*

SDGsでは、あらゆるステークホルダーの参画と協働が求められています。なかでも、企業は創造性とイノベーションを通じて変革の推進力となることが求められています。
日本国内では、内閣総理大臣を本部長、全閣僚を本部員とするSDGs推進本部が2016年5月に設置されました。その後、日本としてのSDGs実施指針を策定すべく、マルチステークホルダーからなる円卓会議が設置され、経済界代表として経団連企業行動・CSR委員長 / 損保ジャパン日本興亜 代表取締役会長の二宮雅也が構成員として参画しています。また、環境側面からのSDGsの実施を推進する、環境省 持続可能な開発目標(SDGs)ステークホルダーズ・ミーティングの委員として、CSR室シニア・アドバイザーの関正雄が参画しています。

当社グループは、多様なステークホルダーとのコミュニケーションを図りながら、SDGs達成に向けた取組みを推進していくとともに、自社の取組みだけでなく、行政やCSR推進団体などと協働し、社会全体のSDGsの推進を担い、発信していくことも重要だと考えています。
IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]兼 ソシオ・マネジメント編集発行人の川北秀人氏には、2001年以来、当社のCSRコミュニケーションレポート「第三者意見」を毎年継続してお寄せいただいています。市民セクターの代表である川北氏とともに、SDGs達成のために必要な社会の課題を共有し、また、当社グループの課題についても共有しました。

長期的な視点で取り組む

ファシリテーター
CSR室シニア・アドバイザー
関 正雄

 本日は、SDGs達成に向けた課題やリーダーシップの重要性について話したいと思います。

二宮 2015年のSDGsの採択は、「人間の英知」の結集と言えると思います。実践にあたっては、SDGsやパリ協定の文脈から、余りあるほどの大義があります。短期的な損得勘定を排除して、達成に向けスピード感をもって推進していかなくてはならないことを改めて感じています。企業は、社会的課題を事業と一体化させていくこと、国民においては、日常生活のなかで認識から行動へと変えていくこと、そして、政府は、国家戦略に落とし込んでいくことが重要です。それぞれのセクターがやるべきことは明確ですので、各セクターがそれぞれリーダーシップを発揮して行動に移せるかが鍵だと思います。私は、SDGs推進円卓会議に経済界代表として参加していますが、国民運動としての拡がりが必要であること、経済界を含む各セクターの積極的な関与について主張しています。2017月5月に開催された第三回SDGs推進円卓会議においては、経団連として、新たな経済成長モデルとして提唱した「Society5.0」を掲げ、2030年にありたい姿に向かって進んでおり、まさにSDGsと機を一にするものであることを述べました。また、先般、私が会長を務める、公益社団法人 企業市民協議会(CBCC)において実施された「CSR実態調査」では、SDGsへ対応している企業と、していない企業の二極化が見られ、啓発活動を強化していかなくてはならないと認識しています。SDGsの普及にあたっては、あらゆるセクターとの双方向コミュニケーションも不可欠です。

川北 お話しされたことは、どれも非常に大切なことですね。「Development」は「開発」と訳さずに、「成長」と解釈することが重要だと考えています。企業が、将来社会に対して、どう貢献できるのか、どのような成長戦略を持つのか、ということです。その推進には、トップが発信するメッセージが重要であり、また、どのようななステークホルダーとどのように接点を持つかを明らかにすることが大切です。市民社会組織(NPO/NGO)も力を発揮していかなくてはと感じています。

二宮 企業が持続的に成長していくためには、社会のSDGsに対する認識が進んでいくなかで、「SDGsに対応出来ていないリスク」を経営陣は認識し、いち早く真剣に取り組まなくてはいけないと思います。

川北 企業にとって、未来への責任を持たないことは、重大なリスクです。「受動性」から「主体性」へと切り替え、経営者が長期トレンドへの確信を持って、戦略を描くことが重要です。

パートナーシップでより大きなインパクトへ

 SDGs達成に向けた取り組むうえで不可欠なのが、企業と市民社会組織(NPO/NGO)など様々な主体間でのパートナーシップだと思います。二宮会長が経団連で代表を務めている組織も、この点に力を入れていますね。

二宮 私が会長を務める、経団連自然保護協議会で注力しているのが、企業とNPO/NGOのパートナーシップです。このパートナーシップの重要性は、毎年実施している海外視察ミッションで、2016年にミャンマーとベトナムに訪問した際に現地NPO/NGOと対話を重ねるなかでも、何度も強調されていた点でした。公益信託 経団連自然保護基金(KNCF) / 経団連自然保護協議会(KCNC)は、1992年に設立され、25年間にわたって自然保護に取り組む国内外のNPO/NGOを支援してまいりました。設立25年を記念し、一つのプロジェクトに対して3年で1億5千万円の支援を実施する「25周年記念特別基金助成事業」を実施しました。一つの団体ではなく複数の団体で構成する「プロジェクト」に着目したのは、SDGsで強調される「パートナーシップ」をふまえたものです。審査の過程でも連携と協働を非常に重視しました。

川北 設立当初から経団連自然保護協議会とお付き合いさせていただいていますが、NPO/NGO同士、また、海外とのパートナーシップを優先的に支援してくださっています。同団体への今後の期待をお話すると、グローバルに事業展開する企業と、その地域で活動するNPO/NGOとのパートナーシップの推進です。最近では、日本企業が海外のNPO/NGOと組んで、展開する地域で環境保全プロジェクトを実施するケースも増えてきました。そのような海外プロジェクトにおいても、現地の社員が参加し、また、地域住民にそういったプロジェクトを認識する機会を支援していただくことに期待しています。

 損保ジャパン日本興亜環境財団が行う、環境NPO/NGOへのインターンシップである「CSOラーニング制度」も、これまでは国内で行っていましたが、今後は海外での実施も検討しています。

川北 日本のNPO/NGOが海外でプロジェクトを実施する際の課題は、ネットワークを拡げることです。欧米のNPO/NGOは、プロジェクト展開する地域とのコラボレーションが非常に上手で、現地の人材を育成し、その後の取組みの拡がりへつながるキャパシティービルディング(能力基盤形成)を行っています。ぜひ、日本の企業とNPO/NGOとの海外で接点強化の機会をご支援いただきたいです。例えば大規模災害時に、どういったNPO/NGOとパートナーシップを組んで取り組めばいいかわからないということが頻繁に起こりますが、協働プロジェクトでつながった経験は、そういった時に活きてきます。

 経団連1%クラブが実施している「社会貢献活動実績調査」によると、回答企業の約8割が、NPO/NGOと接点を持っていると回答していますが、海外での事業展開のなかで現地NPO/NGOとの関係を構築する企業はまだ多くないと感じます。事業展開の戦略の一つになり得るという理解が拡がるといいと思います。

二宮 また、CBCCでは毎年、海外でのCSR視察ミッションを実施していますが、現地のNPO/NGO、CSR関連団体、政府、投資家、企業など様々なステークホルダーとのダイアログを行っています。日本企業が海外で事業展開する際に、そういったダイアログの機会を持つのが不得手なことが課題であり、CBCCのダイアログは非常に重要な機会だと感じています。

川北 欧米企業が上手だと感じるのは、展開先の地域で、現地の社員自らがボランティア組織や社会貢献委員会を形成するよう促し、そこで現地NPO/NGOなどとエンゲージメントを深めていくアプローチを取っていることです。こういったノウハウなども、CBCCなどをプラットフォームとして拡げていただきたいですね。

二宮 おっしゃるとおり、現地の様々な団体などと日本企業の海外拠点をつなぐこともCBCCのような団体の重要な役割だと思います。

川北 また、日本企業は業種や系列でのつながりは強いのですが、欧米の企業が行うようなオープンプラットフォームを自ら形成して、コンプライアンスやリスク管理、社会貢献などの課題を共有する動きがもっと活性化されればと感じます。また、一定のNPO/NGOと長期的にパートナーシップを組み、対話の機会を継続的に持つ企業がもっと増えるべきだと思います。
日本企業が今後さらにグローバルに活躍することを考えると、欧州のような環境や人権への配慮が進む地域での業界団体や消費者団体、NPO/NGOとのダイアログの支援は、リスク管理として非常に重要だと考えます。

二宮 CBCCでも、いただいた観点を取り入れて今後の取組みにぜひ活かしていきたいと思います。

SDGs達成へ向け、日本企業はリーダーシップの発揮を

 日本では、経営者層のSDGsに対する認識は、一般財団法人 企業活力研究所の調査によると、25%程度、欧州では65%と大きな差があります。

二宮 経団連の各組織でも、SDGsをビジネス機会として捉えていくにはどうしたらよいかという議論をもっと深めていきたいですし、エグゼクティブ向けの啓発活動にも取り組んでいきたいと思います。

川北 とても大切なことですね。企業の方々と対話をしていると、経営において、ESG(環境・社会・ガバナンス)への認識が高まっていると感じます。米国の投資家からもSDGsに対する質問が出るようになっており、5年、10年前とは状況が異なるということを説明しやすくなりました。また、2017年には、持続可能な調達に関する国際規格ISO 20400が発行されました。
企業の経営層向けの研修として、2030年にグローバルな観点でどういった立場を取るべきかを見据えた内容を話すようご依頼いただく機会が増えています。経営者への啓発は、短期的・長期的それぞれのリスクを具体的に示すことが重要だと考えます。

SOMPOホールディングスグループへの期待

川北 SOMPOホールディングスグループは、ISO 26000の規格作成過程から参画されるなどさまざまなステークホルダーとの対話の経験も豊富であり、その知見やノウハウをフロンティア企業として提供されることを期待したいです。
また、事業を通じた取組みとしては、日本では2035年には85歳以上1,000万人規模と、人口の約10人に1人を占めるようになります。これを「成長の限界」と考えるのではなく、高齢の方々がドライブアシスト(運転支援)を活用して電気自動車に乗車したり、判断力レベルに合わせた生活ができるようにAIを活用する社会の実現を誘導できる、保険・サービス開発が重要だと考えます。社会の課題解決や理想実現に挑むチャレンジ、トライアルを支えるという、メッセージを出していただきたいですね。

二宮 まさしく保険事業者の生業にかかわることです。時間軸を捉えながら、どのような形でサービスを提供していくことができるか、知恵を尽くすべき課題だと思います。

川北 SDGsは目標であると同時に、社会がどういう方向に導かれていくかという仮説を立てるトレーニングのための、素晴らしい材料であると思っています。特に若年層など、2030年に活躍できる世代の社員を中心に、「考える」というアプローチを鍛えていただきたいです。

 当社グループが2017年3月に実施した「CSRディベロップメント研修」では、二宮会長が、SDGs推進円卓会議や経団連で経験していることを社員に共有し、また、グループディスカッションを設けました。

二宮 考え、そして行動に移す力がないと事業が発展していきません。論議し、意見を表明できる社員が増えていくことが必要です。

川北 少子高齢化が進む日本では、地域コミュニティの在り方も変化や進化が求められています。当然のことながら、企業の商品やサービスも新たな課題への対応が求められますね。高齢化・少子化に世界の先頭で挑んでいく日本におけるの商品・サービス開発のノウハウを、今後それに続く中国や東南アジアといった地域に移転していくことは重要であり、SOMPOホールディングスグループ、そして日本企業に期待しています。

二宮 本日いただいたお話を念頭に置き、SDGs達成に向けて、着実に取組みを進めていき、また、世界に向けて発信していきたいと思います(※「トピックス」参照)。本日はありがとうございました。

トピックス 持続可能な開発のための国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF: High Level Political Forum)における発信

2017年7月、ニューヨークで開催された持続可能な開発のための国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)で、日本政府、国連開発計画(UNDP)が共催するオフィシャルサイドイベントにおいて、損保ジャパン日本興亜 代表取締役会長の二宮雅也が当社の天候インデックス保険の取組みなどを世界に向けて発信しました。

オフィシャルサイドイベントに登壇する二宮雅也
(写真右から2番目)

プレゼンテーションを行う二宮雅也

対談者プロフィール

川北 秀人 氏
IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]* 代表者 兼 ソシオ・マネジメント編集発行人
1987年に大学卒業後、株式会社リクルートに入社。国際採用・広報・営業支援などを担当し、1991年に退職。その後、国際青年交流NGOの日本代表や国会議員の政策担当秘書などを務め、94年にIIHOE設立。NPOや社会責任志向の企業のマネジメント、市民・事業者・行政などが総力を挙げて地域を守り抜く協働・総働の基盤づくり、企業のみならず、NPOや自治体における社会責任(CSR・NSR・LGSR)への取り組み推進を支援している。

  • IIHOE:「地球上のすべての生命にとって、民主的で調和的な発展のために」を目的に1994年に設立されたNPO。

二宮 雅也
損害保険ジャパン日本興亜株式会社 代表取締役会長
1974年日本火災海上保険株式会社(現・損害保険ジャパン日本興亜株式会社)入社。2003年6月日本興亜損害保険株式会社執行役員、2011年6月同社代表取締役社長 社長執行役員、2014年9月当社代表取締役社長 社長執行役員に就任し、2016年4月より現職。
日本損害保険協会会長(2013)。現在、経団連企業行動・CSR委員長、経団連自然保護協議会(KCNC)会長、公益社団法人 企業市民協議会(CBCC)会長、他、「持続可能な開発目標(SDGs)推進円卓会議」構成員。

関 正雄
損害保険ジャパン日本興亜株式会社 CSR室 シニア・アドバイザー
2001年以来、環境・CSR推進に関わり、理事CSR統括部長を経て、2013年より同社CSR室シニア・アドバイザー、明治大学経営学部特任准教授。 公益社団法人 企業市民協議会(CBCC)部会長、ISO26000作業部会エキスパート、サステナビリティに関する各省庁委員等を歴任。国連グローバルコンパクトCaring for Climate運営委員。『ISO26000を読む』(著)、『環境リスク管理と予防原則』(共著)、『気候変動リスクとどう向き合うか』(共著)など。

SOMPOホールディングスグループのSDGs達成へ向けた取組み