ＳＯＭＰＯの新たなデジタル戦略「DDAX」
これまでＳＯＭＰＯグループは、2016年に東京とシリコンバレーにSOMPO Digital Labを設置し、先進的なデジタル技術を取り入れながら、データ・ドリブンなポートフォリオ変革など、デジタル・データ・トランスフォーメーション（DDX）を推進してきました。私は前職の2016年から当社のプロジェクトに関わっており、その立場から思う当社の強みは挑戦の歴史です。以前は新しいテクノロジーの導入自体が目的になってしまい、結果としてユーザーの利便性が上がらず受け入れられない、いわゆるテクノロジードリブンによる失敗に陥ってしまうこともありました。この経験を経て、現在はユーザーや現場の課題を解決するためにテクノロジーを導入する課題ドリブンの考え方を徹底しています。これにより、お客さまや社員の共感を得られ、新たな取組みが受け入れられるようになりました。
課題ドリブンでAI・デジタルを実装する際に重要になるのが実装部隊です。当社のデジタル部門は現在約200人規模になっており、これほどの体制を自前で有する企業は、IT企業を除き国内ではあまり例がないと思います。開発スピードを最大限に速めながら、コストを抑えつつ痒いところに手が届く開発を行うことができる内製化力は当社の大きな強みであると感じています。
昨今は、AIの発展が目まぐるしく、AIを取り入れることにより業務効率化・顧客体験の個別化・ビジネスモデルの変革をもたらすことが企業の存続に必須となってきています。AIを活用するためには、その基盤となるデータを整備し、AIの力をフルに活用することが肝要となります。従来のデジタル戦略を大幅に進化させ、データを最大限に活用しながらAIによるトランスフォーメーションを達成する。これが、私たちがこれから目指すDDAXです。
ミッション
私はＳＯＭＰＯのパーパスに共感し、社会的意義のあることに携わりたいという想いから、2025年6月にグループＣＤＯとして入社しました。私のミッションはＳＯＭＰＯグループ全体のDDAXの推進ですが、そのなかでもAI推進に注力していきます。当社グループのさまざまな事業プロセスにAIを実装し、生産性向上や新規事業の創出につなげ、2030年度のグループの目標の達成に貢献していきます。
企業のAI推進には3つのフェーズがあります。第1フェーズは「汎用型AIを社員が使いこなす段階」、第2フェーズは「AIを業務に組み込む段階」、第3フェーズは「AIを前提にビジネスモデルを変革する段階」です。第1フェーズでいうと、グループ独自開発の対話型生成AIの社員の利用率が50％を超え、議事録作成やメールの下書きなど社員の業務効率化に貢献しています。第2フェーズとしては、各事業の業務に特化したAIの組み込みが進んでいます。例えば、損保ジャパンの保険金サービス部門での事故受付時の担当者割り振り、不正検知の強化にAIを活用しています。また、ＳＯＭＰＯケアの介護施設では、ご入居者さまの介護の実施記録、睡眠データの計測をもとに、ご入居者さま一人ひとりに寄り添った介護を行っています。今後はそれらのデータをもとにしたAIを活用することで、さらなる体験価値を提供しようとしています。今のＳＯＭＰＯはAI推進の第2フェーズを着実に遂行してきており、第3フェーズのビジネスモデル変革の実現に向けて、各事業部門との対話を重ねています。
ミッション達成のためには社内におけるAIビジョンの浸透と文化の醸成が不可欠です。AI活用の文化を醸成するため、ノウハウを共有するコミュニティを運営しており、グループ全体へのAI浸透をさらに強化していきます。また、さらに活動を加速するために当社の強みでもある内製開発のデジタル部門をさらに強化するべく、AI人材の育成と獲得にも積極的に取り組んでいます。
AI推進を通じて目指す姿
これまで多くの新規事業の立ち上げに携わりましたが、困難な局面においても、お客さまの課題に向き合い続けることで成功への道筋を見出し、成果を残してきました。前職では海外経験がないなか、単身でシリコンバレーで事業を立ち上げた経験から、目的から逆算して物事を推進する力と強いメンタリティが自身の強みだと自負しています。この強みを活かし、「全社員がAIを当たり前に使いこなす」、「業務プロセスにAIを実装する」、「各事業がAIを前提としたビジネスモデルに変革する」、という各フェーズを通してDDAXを達成できるよう、必要な解決策を一つひとつ実施し、多様な課題にも挑戦していきます。その過程においては、多くの課題や困難にも直面すると思いますが、決して諦めることなく、AI推進の最前線に立ち、デジタル部隊の力を結集させて取り組んでいきます。そして、AIでこそ実現できる新たな体験価値をお客さまに提供し、「“安心・安全・健康”であふれる未来へ」の実現に貢献するためにDDAXの推進に尽力していきます。
