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取締役会議長メッセージ

画像:社外取締役 取締役会議長 東 和浩 ガバナンスの実効性を高め、グループの持続的な成長に貢献する

3つの課題への対応

昨年度のレポートでは、取締役会の課題として、コミュニケーションの活性化(主に横のコミュニケーション)、内部統制体制の再構築、執行の変革の後押しという3つを提示しており、この1年間はこれらに注力してきました。

まず、コミュニケーションの活性化についてです。取締役会の変化という点で申し上げると、私が議長として議事運営を行うことで、グループCEOである奥村さんは一人の発言者として他の取締役とはフラットな関係になったと思います。一方で、毎回の取締役会冒頭で奥村さんから前回の取締役会以降に起きていることを丁寧に報告してもらっています。社外からは見えないタイムリーかつ豊富な情報と自らの考えを表明してもらうことで、私たち取締役は、理解を深めることができており、それがその後の有意義な議論につながっていることを実感しています。取締役会以外に関していえば、執行と社外取締役による合宿での集中討議、取締役会前後に行われる社外取締役同士のフリーディスカッション、主要なグループ会社である損保ジャパンの社外取締役とのディスカッションなども行っており、マルチウェイで情報が入ってくるようになりました。2025年は7月に開催されたグループの役員が集うリーダーズサミットや昨年から参加しているSOMPOインターナショナルの独立取締役年次総会への参加も予定していますので、これらを通じた情報収集と取締役会での議論の活性化を図っていきたいと考えています。

2点目の内部統制の強化については、第3線の機能強化のために、2024年度に実施したコンプライアンス担当役員の設置、損保ジャパンの社外取締役の設置に加え、2025年度はグループCAE(Chief Audit Executive)にSOMPOインターナショナルのCAEであるデイビッド・カンプート氏を指名し、グループ全体の内部監査の統括を行ってもらいます。内部統制体制の構築において、海外の発想も取り入れていくことは、日本企業にとっては稀有な取組みだと思います。これは、グループにとって最適な人材を最適なポストに登用するというセンター・オブ・エクセレンスの取組みの一環であり、取締役会として、その効果をモニタリングしていきたいと考えています。

3点目の執行の変革の後押しについてですが、この1年は、奥村さんをはじめとする執行とのコミュニケーションの量と質を高めながら、執行の後押しを進めてきたつもりです。新経営体制についても、昨年12月に開催した合宿による集中討議などから議論を重ねてきました。この経営体制の変革は海外企業をグループの一部門とするのではなく、グループ全体をグローバルスタンダードにシフトさせるという日本の金融業界としてはチャレンジングな試みです。この新たな経営体制を初めて奥村さんから聞いたとき、彼の並々ならぬ覚悟を感じました。このいわば逆転の発想ともいえる経営体制の変革という構想を、取締役会としても後押ししていきたいと考えています。

新経営体制の狙い

この新経営体制は、ビジネスだけではなく、人の働き方、組織の文化そのものを変えていくことが目的だととらえています。日本の損害保険業界は明治時代以降、戦争やさまざまな統制、高度経済成長を経て、独自の発展をとげてきました。その後、1996年の保険業法改正によって自由化が進み、グローバルなリスクをとる時代へと変化していきましたが、私が経験した銀行業界と同様、損害保険業界も「護送船団方式」と呼ばれる業界全体が同じスピードで進むという状態を引きずってしまっていたように思います。この古い体質から早急に抜け出す必要があるわけで、今回の新経営体制では、奥村さんの抜本的なカルチャー変革に対する覚悟が伝わってきます。

取締役会は、カルチャー変革の取組みによって現場の思考や行動が実際に変わってきているのかをしっかりモニタリングする役割を担っています。細部をみるというよりもグループ全体を継続的にみて変化を確認することに時間をかけたいと思います。そのために、私たちは、例えば損保ジャパンの部店長会議に同席し、ディスカッションの状況を確認するなどして現状の把握に努めています。企業文化が変わるには相当な時間がかかると思っており、正直なところまだまだこれからだと思います。

変革のカギとなる一人ひとりのプロフェッショナリズム

私は変革のカギは、「プロフェッショナリズム」だと思っています。もともと保険は、人知を超えるリスクを乗り越えるためにお互いに助け合う「共助」の精神から生まれており、SOMPOグループにおけるこの精神は今日では介護事業にもつながっています。この共助を実現するためには、SOMPOの社員一人ひとりが「プロフェッショナル」でなくてはなりません。プロフェッショナルには、知識や技術を持っていることも重要ですが、それ以上に「献身的な使命感」を伴っていることこそが本質ではないでしょうか。

人は動物のなかでも社会的な動物と言われています。人が幸福感を感じるのは他者の役に立っているという満足感から生まれると言ってもよいでしょう。その根底には、お客さまのために、社会を良くするために、という発想や責任感が常にあるはずです。自分たちは何のために生きているのかという存在意義や原点を見つめ直すこと、言い換えるとパーパスのために何をやるかということを再認識する必要があると思います。会社が掲げるパーパスを形式的にとらえるのではなく、社会のために何がしたくて、そのなかで自分は何を磨いていこうかというマインドを持ってもらいたいのです。企業の中にいると、自分の担当範囲の仕事をこなすという考えになりがちですが、献身の対象は会社ではなく、お客さまや社会であるべきなのです。お客さまや社会を良くするために行動することがプロフェッショナリズムだと思います。社員一人ひとりが自分たちの原点である存在意義に立ち戻り、それに基づいて行動できているかを意識的にモニタリングしていきたいと思います。

今後のグループの課題と取締役会として果たしていきたいこと

ビジネスとカルチャーの変革のスピードを加速させ、通常10年かかるようなことをいかに早く組織に定着させるかが今後の課題です。そのためには、奥村さんと2人のビジネスCEOには、異文化を結合させ、事業部門を統合・拡大していくことが求められます。SOMPO P&Cは、地域によって異なるカルチャーやビジネスの方法をどのように融合させていくかが課題となります。SOMPOウェルビーイングは、生命保険、介護、ヘルスケアというそれぞれの事業が「命あるかぎり、人間がどのように幸福に過ごしていくか」という想いを共有することで、いかに相互のシナジーを生み出すかが課題です。経営トップには、それぞれの部門の声にしっかりと耳を傾けてリーダーシップを発揮いただきたいと思います。

取締役会は、これまで以上に執行とのコミュニケーションを密にして、執行の変革を力強く後押しすることで、グループの持続的な成長に貢献していきたいと思います。


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